第63回自動制御連合講演会

特別企画

特別企画概要 講演概要

特別企画概要

タイトル
「わ」:これからの社会の中で求められるシステムとは?
日時
11月21日(土)15:30 〜 17:15
オーガナイザ
原 辰次 先生(東京工業大学), 椹木 哲夫 先生(京都大学)
企画母体
日本学術会議IFAC分科会, 自動制御協議会
企画概要
本企画では,IFAC World Congress @ Yokohama, 2023 のキーコンセプトである『「わ」:「環」を以て「輪」を為し「和」を創る』に向けた研究の方向性を,特に「これからの社会の中で求められるシステムとは?」という問いに焦点を当てて議論することを試みる.言い換えれば,Society 5.0 が目指す未来社会を「わ」の視点で考えてみよう,ということである.この企画を通して,社会システムを「環境(自然環境・社会環境)と調和する生活世界」と捉え,1. 「システミック思考」,「価値の取り扱い」など,システムデザインの新しい方向性とは?,2. 学習や予測の先端的理論・技術をどう活かすか?,3. 望ましいシステム構造とは?,といった問いに対しての5人の講演者の考え・試みを紹介する.最後に,紹介された様々な視点の関係性の理解を深めるため,総合討論を行う.
プログラム
15:30-15:40
企画の趣旨説明

15:40-15:55
「わ」で視る社会システム:生活世界における価値の共創
 椹木 哲夫 先生(京都大学)

15:55-16:10
社会システム包括的設計論:価値をどのように扱うか?
 井村 順一 先生(東京工業大学

16:10-16:25
都市環境システム設計における学習の展開:選好を活かした
和の実現に向けて

 荒井 幸代 先生(千葉大学)

16:25-16:40
生活社会に溶け込む"微気象"予測
 大西 領 先生(東京工業大学)

16:40-16:55
「わ」で視る社会システム:計測・予測・制御の調和
 原 辰次 先生(東京工業大学)

16:55-17:15
総合討論


講演概要

「わ」で視る社会システム:生活世界における価値の共創

講師
椹木 哲夫 先生(京都大学)
講演概要
サイバー・フィジカル・システムでのフィジカル世界については,これまでどちらかといえば情報世界に対する物理世界という対比構図が意図されてきたが,ここではあえてフィジカル世界を「人」の活動の場に拡張し,「生活世界(Lebenswelt)」として捉えてみたい.この生活世界とは,生産活動・労働活動のみならず,サービス活動・生活活動・社会活動など,すべからく人の感覚により成り立つ世界が含まれる.このような「生活世界」はこれまで「システム」と二項対立的に捉えてきたが,ここでは生活世界の「システミック」な側面に着目し,無限定で複雑系の様相を呈する生活世界として構成される社会のデザインについて考える.
講師略歴
顔写真1 1983年京都大学大学院工学研究科精密工学専攻修士課程修了.博士後期課程研究指導認定退学後,助手・助教授を経て 2002年教授,2005年改組により同大学工学研究科機械理工学専攻教授,現在に至る.1991〜1992年米国スタンフォード大学客員研究員.人間−機械共存環境下での協調システムの設計・解析と知的支援等に関する研究に従事.京都大学工学博士.計測自動制御学会前会長,日本学術会議連携会員.過去にヒューマンインタフェース学会会長,システム制御情報学会会長,IEEE SMC Japan Chapter Chair,文部科学省中央教育審議会大学分科会専門委員,産業競争力懇談会(COCN)アドバイザ,等を歴任.


社会システム包括的設計論:価値をどのように扱うか?

講師
井村 順一 先生(東京工業大学)
講演概要
電力,ガス,熱,交通,輸送,金融,サービスなどの社会システムの包括的設計論を,人間と自然との調和の視点で「価値」というものを中心に論じる.特に,膨大で多様なプレイヤーの需要に伴うリソース配分を通じて様々な価値を実現するために,情報(計測・予測・制御と市場),物理,および価値からなる多階層の大規模ネットワークとして社会システム設計を捉えたCyber-Physical Value Systemという概念を提唱する.その上で社会システム設計には,需給バランスと安定性とともに多価値共最適性,レジリエンス,オープン適応性の3つの特性が重要であることを論じる.また,さまざまなシステムをつなぐSystem of Systemsの考え方を価値で捉え直すことで,人間と調和した形で様々な価値をつなぐ設計論の重要性について電気自動車のナビゲーションを例に紹介する.
講師略歴
顔写真2 1988年京都大学工学部卒業,1990年同大学工学研究科修士課程修了,1992年同大学工学研究科博士課程中退,同年同大学工学部助手,1995年京都大学博士(工学)取得.1996年広島大学工学部助教授,2001年東京工業大学情報理工学研究科助教授,2004年同教授,2016年同大学工学院教授,2018年より副学長(教育運営担当)を兼任.現在,IFAC World Congress 2023 General Chair,JST創発的研究支援事業POなどを務める.過去にIEEE Control System Society理事,JST CREST EMS領域研究代表者.制御理論を軸に電力,交通,バイオシステム等の応用に関する研究を行う.


都市環境システム設計における学習の展開:選好を活かした和の実現に向けて

講師
荒井 幸代 先生(千葉大学)
講演概要
交通,エネルギーマネージメント,減災をはじめとする都市環境システムは,その構成要素のほとんどが人間であり,自然環境にさらされた窮極の動的システムである.限定的合理性として議論されてきたように,人間の意思決定プロセスを観察すること,制御することは共に難しい.一方で,シビックプライドを醸し出すことによってあっという間に,人々の力で望ましい挙動が創成される事例も数多く存在する.人は制御対象であり,制御主体でもある.発表では,機械学習を人間の行動を推定するためのアプローチとして位置づける.暗黙知といわれる知識形式化し,人の選好(志向,嗜好,思考)を引き出す方法としての学習法を紹介し,選好を踏まえたインセンティブ設計に言及する.
講師略歴
顔写真3 慶應義塾大学理工学部卒業後,ソニー(株),東京工業大学院理工学研究科制御工学専攻1998年博士(工学).Carnegie Mellon University,Robotics Institute,Fraunhofer AIS上級研究員を経て現在,千葉大学大学院工学研究院都市環境システム教授.マルチエージェント系,強化学習研究に従事.人工知能学会,計測自動制御学会,電気学会,OR学会,AAAI,ACM 各会員.


生活社会に溶け込む"微気象"予測

講師
大西 領 先生(東京工業大学)
講演概要
未来都市では,ネットワークに繋がる自律システム群が協調・連携することによって,安全で快適かつ,自然(人間を取り巻く世界,環境と生態系)と調和した持続可能な社会が実現される.温暖化,環境破壊,ヒートアイランド,高齢化に伴う生産性減少や防災力低下が克服され,自然と調和した持続的かつ快適な社会の中で,人々は安心して創造的に暮らす.そのような社会を実現する上で,自然環境の予測情報は重要な社会基盤の一つである.本講演では,人間活動に直接的な影響を及ぼす地表付近の気象,"微気象"を取り上げ,数値シミュレーションによる予測技術と観測および制御からなるフィードバックループによる,環境と調和する生活世界の実現を議論する.
講師略歴
顔写真4 2005年京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了,博士(工学).2005年(独)国立環境研究所 地球環境研究センターポスドクフェロー.同年,(独)海洋研究開発機構 地球シミュレータセンター研究員.2011年から2013年まで日本学術振興会 海外特別研究員(兼任)として英国インペリアル・カレッジ・ロンドン大学に在籍.2014年(国研)海洋研究開発機構 地球情報基盤センター 主任研究員(グループリーダー),2020年4月,東京工業大学 学術国際情報センター准教授(現職).


「わ」で視る社会システム:計測・予測・制御の調和

講師
原 辰次 先生(東京工業大学)
講演概要
本稿では,IFAC World Congress @ Yokohama, 2023 のキーコンセプトである『「わ」:「環」を以て「輪」を為し「和」を創る』を通して,Society 5.0 が目指すこれからの社会システムについて考察する.まず,「わ」の様々な側面を紹介した後,その概念と社会システムの関係を望ましいシステムの構造という視点で論じ,相互作用の設計がキーとなることを述べる.特に,社会システムを考える上で不可欠な「価値」を取り込んだ「縦横2重階層構造」を提案し,縦構造増における「異なる時空間スケールの整合性」と横構造における「異なる物理量間の整合性」の重要性を指摘する.ついで,「東日本大震災」,「豪雨災害」,「COVID-19」の3つの具体的事例を通して,計測・予測・制御の調和を目指した研究の方向性を示す.
講師略歴
顔写真5 1976年東京工業大学大学修士課程修了.1984年東京工業大学助教授.1992年同教授.2002 年東京大学教授,2017年中央大学教授,2019年東京工業大学研究員.東京大学・東京工業大学名誉教授.ロバスト制御,グローカル制御,制御系設計,システムバイオロジーなどの研究に従事,工学博士.George S.Axelby Outstanding Paper Award (2006),SICE 論文賞・教育貢献賞など多数受賞,2009 年度SICE 会長.2009, 2010 年IEEE CSS Vice-President.SICE・IEEE・IFAC のFellow.

△ページの先頭へ