第63回自動制御連合講演会

SICE企画セッション

適応学習制御講義会 先端制御セミナー チュートリアル講演

計測自動制御学会(SICE)の企画として,通常の参加登録を行っていただくことで参加できる下記の企画セッションを開催いたします.全ての講演が第A室で行われます.なお,通常セッションに対して,時間が変則的である点にご注意下さい.


適応学習制御講義会

日時
11月21日(土)9:00 〜 10:40
司会者
大西 義浩 先生(愛媛大学)
企画母体
計測自動制御学会
企画概要
本企画では,不確定な対象を取り扱う統計手法として近年注目されているガウス過程回帰に関する基礎と状態推定およびフィードバック制御則の設計について講義を行います.当該トピックの基礎と同時に最新の研究成果を知りたい研究者・技術者および学生の皆様に適した内容となっています.なお,本企画は2019年12月26日に統計数理研究所にて行われた講義会の内容をダイジェスト版として実施するものです.
プログラム
09:00-09:45
ガウス過程回帰の基礎と状態推定への応用
 福永 修一 先生(東京都立産業技術高等専門学校)

09:55-10:40
ガウス過程モデルを用いたフィードバック制御則の設計
 伊藤 優司 氏(株式会社豊田中央研究所)

 ガウス過程回帰の基礎と状態推定への応用

講師
福永 修一 先生(東京都立産業技術高等専門学校)
講演概要
ガウス過程回帰とは関数を近似する手法の1つでありベイス推定やカーネル関数を用いている点が特徴である.本講演では最初にガウス過程回帰の基礎事項について,他の関数を近似する手法との比較を通して説明する.つぎに未知のシステムにおける状態を推定する問題に対してガウス過程回帰を応用した手法を紹介する.この手法は未知のシステムをガウス過程回帰により近似し,近似したシステムの状態を非線形フィルタにより推定している.講演では非線形フィルタの基礎事項について述べた後に,ガウス過程回帰に基づく非線形フィルタについて紹介をする.
講師略歴
2003年明治大学理工学部機械情報工学科卒業.2005年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程終了.2008年名古屋大学大学院工学研究科博士後期課程終了.2007年東京都立産業技術高等専門学校助教.2012年より同准教授となり現在に至る.その間,2014年産業技術総合研究所招聘研究員,同年ナイメーヘン・ラドバウド大学客員研究員.状態推定,システム同定の研究に従事.博士(工学).計測自動制御学会,電子情報通信学会の会員.


 ガウス過程モデルを用いたフィードバック制御則の設計

講師
伊藤 優司 氏(株式会社豊田中央研究所)
講演概要
機械学習やシステム同定の分野で広く用いられているガウス過程回帰は,対象に関する事前情報を殆ど必要としない,データに対するモデルの過適合を抑制できる,モデルの不確かさを特定できる,等の特徴を有している.近年では,モデル化のみならず未知の制御対象に対する制御則の設計にも応用されており,制御工学の分野においても注目されている.本講演では,ガウス過程回帰を用いたフィードバック制御則の設計に関して,講演者らの取り組みを中心に紹介する.
講師略歴
顔写真1 2011年3月名古屋大学大学院工学研究科修士課程修了.同年4月株式会社豊田中央研究所入社.2014年4月同研究科博士課程を修了し,現在に至る.確率システム制御,非線形システム制御,触覚センサなどの研究に従事.計測自動制御学会,IEEEの会員.





先端制御セミナー

日時
11月21日(土)11:00 〜 14:15
司会者
山本 茂 先生(金沢大学),金子 修 先生(電気通信大学)
企画母体
計測自動制御学会
企画概要
本企画では,2019年に計測自動制御学会制御部門が定める木村賞を受賞した蛯原義雄先生,パイオニア賞を受賞した石崎孝幸先生,パイオニア技術賞を受賞した澤田賢治先生に受賞に関わる研究内容について講演していただきます.木村賞は,制御部門が関与する科学技術および産業の分野において,創造的な研究を通して,世界的に顕著な業績を挙げ,本学会の活動を含む制御界に大きな影響度を与えた論文の著者である学生・研究者・技術者個人に贈呈されます.パイオニア賞は当該分野において,今後の発展に大きく寄与すると期待される新規性の高い研究業績をあげた研究者・技術者個人に贈呈されます.パイオニア技術賞は,当該分野において今後の発展に大きく寄与すると期待される高い技術業績をあげた研究者・技術者・ 団体に贈呈されます.本企画は,部門賞受賞者による講演を通じて制御理論および制御技術に関する先端的な研究成果や今後の動向を広く周知することを目的としています.
プログラム
11:00-11:45
Analysis and Synthesis of Positive Systems Using Convex Optimization
 蛯原 義雄 先生(九州大学)

11:45-12:30
レトロフィット制御による分散制御系のモジュラデザイン
 石崎 孝幸 先生(東京工業大学)

12:30-13:30
 昼休憩

13:30-14:15
制御システムのための多階層型セキュリティ機能の開発
 澤田 賢治 先生(電気通信大学)

 Analysis and Synthesis of Positive Systems Using Convex Optimization

講師
蛯原 義雄 先生(九州大学)
講演概要
A linear time-invariant system is said to be (internally) positive if its state and output are nonnegative for any nonnegative initial state and any nonnegative input. In the former part of this talk, we focus on the characterization of the weighted L1-induced norm of positive systems in terms of linear programming. As the main result, we show that the weighted L1-induced norm plays a fundamental role for the stability analysis of interconnected positive systems. On the other hand, in the latter part of this talk, we discuss the treatments of nonnegative signals in the standard (non positive) feedback control systems. We particularly focus on the l2/l2+ induced-norm of discrete-time LTI systems in which input signals are restricted to be nonnegative. We finally show that the l2/l2+ induced-norm is useful in stability analysis of recurrent neural networks with activation function being ReLU.
講師略歴
顔写真1 2002年3月京都大学大学院工学研究科電気工学専攻博士後期課程修了.同年4月京都大学大学院工学研究科助手,同研究科講師,准教授を経て,2019年九州大学大学院システム情報科学研究院教授となり現在に至る.現在 IEEE CSS Technical Committee on Robust and Complex Systems Chair, および2021年に京都で開催予定の The 10th IFAC Symposium on Robust Control Design (ROCOND'21) NOC Chair.


 レトロフィット制御による分散制御系のモジュラデザイン

講師
石崎 孝幸 先生(東京工業大学)
講演概要
システム制御理論が扱う対象はますます大規模化・複雑化している.例えば,内閣府が提唱するSociety 5.0の構想では,我々が生活する未来社会の全体が議論の対象となっている.このような次世代の大規模系に対するシステム制御理論の構築には,機械システムなどを対象として発展してきた従来理論を要素技術として応用することだけでなく,多様な先端技術を機能的に統合(システム化)するための基盤技術として,システム制御理論分野で深められてきた見識をシステム管理者の俯瞰的な視点から適切に利活用することが求められる.特に,ひとりのシステム管理者がすべてシステム全体を集中的かつ自前でモデリング・解析・制御することは現実的に不可能であるため,複数の独立した主体がそれぞれのサブシステム(モジュール)を分散的に管理することを前提に,新技術をモジュール単位で継続的に組み入れ・組み換えられるような,大規模系のモジュラ設計が重要となる.本講演では,この大規模系のモジュラ設計に関する新たなアプローチとして,講演者らにより提案されたレトロフィット制御理論を概説する.また,電力システム制御への応用を通して本アプローチの有効性を示す.
講師略歴
顔写真1 2008年東京工業大学工学部制御システム工学科卒業.2009年同大学大学院情報理工学研究科修士課程修了.2012年同研究科博士課程修了.2012年11月同研究科助教.2016年4月同大学工学院システム制御系助教.2020年4月同系准教授となり現在に至る.2011年日本学術振興会特別研究員(DC),2012年同研究員(PD)へ資格変更.2012年6月より5か月間,客員研究員としてスウェーデン王立工科大学に滞在.博士(工学).計測自動制御学会,システム制御情報学会,IEEEの会員.2010年計測自動制御学会論文賞,2015年システム制御情報学会論文賞,2018年東京工業大学挑戦的研究賞(学長特別賞),2019年計測自動制御学会制御部門パイオニア賞などを受賞.


 制御システムのための多階層型セキュリティ機能の開発

講師
澤田 賢治 先生(電気通信大学)
講演概要
制御システムは情報技術の発展とともに進歩し今や大規模なネットワーク化システムとなっている.ただし,ネットワーク化は接続性や可用性重視でセキュリティ面が片手落ちな状況が続いている.本講演では,制御システムの特性に合わせたセキュリティ技術として,階層型セキュリティ技術の進展状況を紹介する.既存の制御システムのセキュリティ技術がサイバー攻撃検知による防御を前提としているのに対して,紹介する技術は「サイバー攻撃の影響が発生した後のダメージコントロール」まで実現する.実機を利用した応用結果についても紹介する.
講師略歴
顔写真1 2009年大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻博士後期課程修了.同年電気通信大学システム工学科助教,2010年同大学知能機械工学科助教,2015年同大学 i-パワードエネルギー・システム研究センター准教授となり現在に至る.博士(工学).ハイブリッドシステムや制御システムセキュリティに関する研究に従事.システム制御情報学会,電子情報通信学会,電気学会,日本機械学会,IEEE会員.2015年度と2019年度にFA財団論文賞,2018年度油空圧機器技術振興財団論文賞,2018年度日本機械学会賞(論文)を受賞.2016年より制御システムセキュリティセンター顧問.




チュートリアル講演

日時
11月22日(日)11:40 〜 15:20
司会者
加古 純一 氏(トヨタ自動車株式会社)
企画母体
計測自動制御学会 プラントモデリング部会
企画概要
近年,IoT化したモノ(Things)は,非常に膨大な情報を元に機械学習や最適化手法などの高機能な計算負荷の高い手法を活用して開発されている.さらにこれらの手法は,モノに搭載されるCPUの高性能化にともない,制御設計段階だけでなく,オンボードに実装されることもあるため,その制御開発には多大な労力を要する様になってきた.そこで,本企画では,3件のチュートリアル講演を行い,実例を通じて制御システム開発の方法論やそれを支える周辺ツール群について紹介する.
プログラム
11:40-12:30
機械学習とCAE
 横島 靖典 氏(シーメンス株式会社)

12:30-13:30
 昼休憩

13:30-14:20
自動運転のためのモデルベース開発手法とシナリオベースへの対応
 佐々木 茂 氏(dSPACE Japan株式会社)

14:30-15:20
HILS実装のためのモデルのリダクションと高速化
 菊地 広二 氏(SOLIZE Engineering株式会社)

 機械学習とCAE

講師
横島 靖典 氏(シーメンス株式会社)
講演概要
本講演では,シミュレーション技術を補完する技術として,機械学習を活用することについて提案する.また,それを具体化する取り組みについて,発表済みの内容に基づいた事例をご紹介する.第一例として,シミュレーションにおける試験の網羅性向上を目的として,変分オートエンコーダー(VAE)を用いたテスト設計手法をご提案する.第二例として,シミュレーションの境界条件を半自動的に作成することを目的として,スマートフォンによって撮影した動画から,人の動線予測を行った取り組みについてご紹介する.
講師略歴
顔写真1 2010年よりシーメンス株式会社勤務.制御開発や機械学習,自動化などにかかわるプロジェクトのビジネス開発に従事.







 自動運転のためのモデルベース開発手法とシナリオベースへの対応

講師
佐々木 茂 氏(dSPACE Japan株式会社)
講演概要
自動運転の機能検証には,数千〜数億キロメータの一般道での走行試験が必要であると言われている.しかし,試験のためにこの距離を実車で走行するのは,事実上不可能なため,シミュレーションを中心とする機能検証手法が注目されている.自動運転の開発にも,MBD(Model Based Development:モデルベース開発)は有効な手法であるが,センサー信号および,道路や他車両・人・自転車・周囲の建造物等の周囲環境の充実が必要である.これらのモデルは無限とも思われる環境変化の組合せに対応する必要があり,Matlab/Simulink単独でのシミュレーションは困難である.本講演では,これら環境整備のために必要な環境の具体的な生成方法およびMBD手法への取り込みについて言及する.
講師略歴
顔写真1 1981年にトヨタ自動車工業(株)入社.対米4気筒エンジンの適合に従事.1986年よりエンジン用実験電算システムの構築を担当.1991年からは制御用ECUソフトウエア開発環境およびこれの運用体制構築に従事.2013年トヨタ自動車定年退職/dSPACE Japan入社.現在に至る.





 HILS実装のためのモデルのリダクションと高速化

講師
菊地 広二 氏(SOLIZE Engineering株式会社)
講演概要
ADAS(先進運転支援システム)などの高度化や車載システムの複雑化,大規模化により,実機による検証だけでは十分な検証が難しくなりHILSの需要が拡大している.本講演では過去に開発した別用途目的のプラントモデルをHILSに適用するべく,モデルをリダクションすることなどによる高速シミュレーション化についての開発事例を紹介する.また,MathWorks社のSimulink/Simscapeを用いたプラントモデリングについて,より高速にシミュレーションを実行するためのモデリング作法やソルバー設定方法についてのノウハウを紹介する.
講師略歴
顔写真1 2013年よりSOLIZE Engineering株式会社勤務.制御開発やプラントモデリング,HILS環境構築などのエンジニアリング業務に従事.






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