論文集抄録
〈Vol.60 No.6(2024年6月)〉

タイトル一覧
[論 文]

[ショート・ペーパー]

 


 

[論 文]

■ Sparse Activity-Drivenネットワークにおける平均合意の収束性能解析

奈良先端科学技術大学院大学・多川 純平,
広島大学・小蔵 正輝,南山大学・杉本 謙二

本論文ではactivity-drivenネットワークと呼ばれるテンポラルネットワークにおける平均合意ダイナミクスの収束レートを解析する.テンポラルネットワークにおける平均合意ダイナミクスの収束レートを見積もる方法の一つにHaranoとMesbahiによる評価があるが,その計算の複雑さはactivity-drivenネットワークの場合は頂点数に対して指数関数的に増加してしまう.本研究では,各時刻においてactivity-driven ネットワークが疎な状況においては上述の評価を容易に計算できることを示す.この結果をさらにsimplicial activity-driven networkへ拡張する.


 

■ ロードヒーティングを含む配電システムのスイッチングによる予測制御

富山県立大学・武藤 佑弥,小島 千昭,京都大学・薄 良彦

近年,分散型電源と従来の配電設備の適切な融合による電力の流れの最適化が,配電システムの運用に要求されている.一方で,豪雪地帯では,積雪による生活環境の悪化が深刻な問題となっている.このような事項に対処するため,本論文では融雪のためのロードヒーティングを含む配電システムについて考察する.はじめに,地中配電線とヒーティングケーブルの電圧分布を記述する非線形ODEモデルにヒーティングケーブルの切り替え,地中の熱拡散方程式,地表の積雪の方程式を組み合わせることによって,配電システム全体の数理モデルを記述する.主要結果として,配電損失の低減化,電圧変動の抑制,および効率的な融雪を同時に達成するスイッチング予測制御を提案する.さらに,実際の電力と気象に関する時系列データに基づくシミュレーションにより,提案するスイッチング予測制御の有効性を検証する.


 

■ FPGA実装を指向した未学習クラス推定混合ガウス型識別モデルと複合動作の識別

横浜国立大学・柏木 僚太,
横浜国立大学/神奈川県立産業技術総合研究所・迎田 隆幸,
横浜国立大学・島 圭介

筋収縮によって発生する筋電位信号を用いた前腕動作の推定を応用して,筋電義手の制御が可能である.汎用性・安全性の高い筋電義手を開発するためには学習時に想定されない未知の動作 (未学習動作)や複数の動作を組み合わせて実現される複雑な動作 (複合動作)を考慮した識別器が求められる.一方,高い識別精度を持つ識別器をハードウェアで実現することは困難である.そこで,本論文では FPGA (Field Programmable Gate Array)に実装可能な新しい確率ニューラルネットを提案し,筋電位信号を用いたインタフェース制御システムに適用した.提案したネットワークはFPGA実装に適した2つの確率分布を内包し,FPGA上での未学習動作を考慮した動作推定を可能とした.さらに,複数の小規模な提案ネットワークにより複合動作を解釈することで,FPGAの並列処理を生かした高速化,識別タスクの単純化が実現可能となった.実験では,提案手法がFPGA実装に適したモデルであることを示し,複合動作と未学習動作を考慮した高精度な動作推定が可能であることを示した.


 

拡張カルマンフィルタを伴うファジィ制御によるAUVの追従制御

大和製衡・山田 桃也,琉球大学・金城 寛,
中園 邦彦,上里 英輔,大城 尚紀

本論文では,拡張カルマンフィルタ(EKF)を伴う小型自律型水中ビークル(AUV)ロボット用に設計されたファジィ制御器が有効であるかを検証する.ファジィ制御は,人間がロボットを操縦するために使用する制御方策を,メンバーシップ関数とファジィ制御規則で実現するものである.本研究では,ロボットの前進制御に関する規則と角度調整に関する規則の2種類のファジィ規則表でロボットの運動を制御する.前進制御については目標位置までの距離と前進速度に基づいた規則とし,角度調節についてはヨー角と回転速度に基づいた規則とした.AUVの制御に必要な状態量は,ロボットの現在位置,ヨー角,前進速度,および回転速度である.一般に海中を運動するロボットは,GPS電波が届かないため,ロボットの現在位置が不明である.本研究では,センサで得られたノイズを含んだ速度情報のみに基づいて,EKFを使用し,ノイズの低減および観測できないAUVの位置情報を推定する.
本手法の有効性を示すため,小型AUVに対して,直線移動および回転移動を組み合わせた目標移動経路を設定し,それに追従させる制御問題を課した.数値実験の結果,EKFを伴うファジィ制御器を適用したAUVは海中の三次元空間で移動する目標位置への追従制御に有効であることが示された.


[ショート・ペーパー]

■ 人工ポテンシャルを利用した回避経路による2輪移動ロボットの障害物回避制御法

東京電機大学・小池 優作,日高 浩一

自律走行運搬ロボット(AMR)の移動では,環境に対応した経路計画と経路追従による移動制御法が提案されている.
本論文では人工ポテンシャル法を局所経路計画に使用し,計画された経路に追従させる障害物回避制御法を提案する.提案法は勾配情報とともにロボットの姿勢変化を考慮する経路に追従させることで大回りでない移動を実行可能とし,局所最小点でも移動可能とした.両側に壁がある廊下での移動回避実験結果より,障害物間を通過してゴールへ到達可能であることを確認している.