論文集抄録
〈Vol.60  No.11(2024年11月)〉

タイトル一覧
[論 文]


[論 文]

■ 歩容の変化を考慮したロボット義足のための膝角度制御システムの開発

三重大学・勝村 一優,仙崎 真正輝,矢野 賢一,
今仙技術研究所・後藤 学,鳥井 勝彦

大腿義足による歩行中,義足使用者は歩幅や歩行速度,勾配角度に関わらず,異常歩行に陥らない安定した歩行を獲得することが求められる.これまでロボット制御技術を活用した様々な膝継手が開発されているが,義足使用者個々の歩行特性ではなく,健常者の歩容を再現するように膝継手を制御しているため,義足使用者のリアルタイムの歩行パターンの変化に義足が追従できずに歩容の乱れに繋がってしまう.そこで本研究では,歩行パターンの変化に応じてロボット義足の制御パラメータを変動に応じて可変とすることで,膝継手の屈曲角度を歩行環境に自動適合させる制御システムを開発した.具体的には,義足使用者の1 歩行周期前の歩行特性に着目し,リアルタイムの歩行特性に膝継手屈曲角度を追従させる適応型の歩行モデルを提案した.義足使用者による臨床実験の結果,リアルタイムで検出した歩行パターンの変化に応じて屈曲角度を制御することで,関節角度において歩容の安定化を確認し,本提案の有効性を示した.


 

■ 非線形ネットワークの協調分散安定化とその制御ノード選択への応用-増分指数消散性に基づくアプローチ-

広島大学・佐藤 裕介,河野 佑,和田 信敬

本研究では,非線形サブネットワークを構成要素とするネットワークの協調分散安定化問題を考える.まず,増分安定性の枠組みで消散性理論を再訪し,ネットワーク全体の安定化問題をサブネットワークごとの増分指数消散化問題へと分解する.増分安定性の解析が平衡点の情報を必要としないことから,平衡点の計算にはネットワークの全情報が必要であるという問題を回避できる.これにより,設計問題はサブシステムごとの問題へと完全に分離できる.さらに,個々の設計は連立線形行列不等式へと帰着できるため,提案手法により,実装可能性とスケーラビリティを兼ね備えた制御器設計が可能となる.加えて,提案した設計条件の構造を利用して,ネットワーク全体の安定性を保ちつつ,サブネットワークごとに制御ノードを削減する手法も構築する.


 

■ 複数姿勢からの関節位置推定による関節可動域計測システム

東京都立産業技術高等専門学校・後藤 和彦,国際医療福祉大学・松野 豊,
佐賀大学・杉 剛直,国際医療福祉大学・後藤 純信

脳卒中片麻痺患者のリハビリテーションを定量的に評価するためには関節可動域(ROM)の測定が不可欠である.しかし,ROMの測定には十分な知識と経験が必要であり,検者の負担は小さくない.そのため,ROM計測のコンピュータ支援システムは検者の負担軽減に役立つと考えられる.Kinectは人体の多くの関節位置を自動的に検出することができるため,ROMの自動計測システムに適している.本研究の目的は,上衣着脱動作のリハビリテーションでの利用を想定した,Kinectを用いたROM自動計測システムの開発である.本システムでは胸腰部と肩甲帯の可動性を評価するために.胸腰部の屈曲,伸展,側屈,回旋と,肩甲帯の屈曲,伸展のROMを計測した.そして,本システムでは正確なROM計測のために,Kinectでは得られない関節位置を複数の姿勢データから推定した.開発したシステムを健常成人4人のROM測定に適用し,その結果を作業療法士の結果と比較した.本システムと作業療法士の測定誤差の多くは5度未満であった.このことから,本システムは,胸腰部と肩甲帯の可動性評価における検者の負担を軽減するとともに,リハビリテーションの効果を患者にフィードバックするのに役立つと期待される.


 

■ゲーム観戦が瞬目回数および脳血流量に及ぼす影響

早稲田大学・中村 宣博,鈴木 恒大,林 直亨

ゲーム観戦は,ゲームをプレイすることと同様に人気が出てきている.ゲームプレイで瞬目回数が減少し,精神作業によって脳血流量が増加することが先行研究で報告されている.ゲーム観戦が瞬目回数と脳血流に及ぼす影響を検討することが必要である.そこで本研究では,ゲーム観戦が瞬目回数および脳血流に及ぼす影響を検討した.また,これらの反応をゲームプレイ時とゲーム観戦時とで比較した.健常男性10名を対象とした.対象者は,ゲームをプレイする(G)試行,ゲームを観戦する(W)試行,対照(C)試行の3つの試行を座位安静5分間の後に5分間行った.瞬目回数,中大脳動脈平均血流速度(MCA Vmean)および心拍数(HR)を連続的に測定した.GおよびW試行中の瞬目回数は,安静時から有意に減少した.この瞬目回数の減少はC試行より有意に少なかった.G試行中にMCA Vmeanは安静時から有意に上昇した.このMCA Vmeanの上昇はG試行で他の試行よりも有意に大きかった.これらの結果は,ゲーム観戦がゲームプレイと同程度に瞬目回数を減少させる一方,脳血流量は変化させないことを示唆している.