論文集抄録
〈Vol.59 No.9(2023年9月)〉

タイトル一覧
[論 文]


[論 文]

■ 定値外乱下における微分フラットシステムに対する安定化制御

東京理科大学・金盛 雄大,中村 文一

微分フラットシステムは,線形システムに変換可能な非線形システムであり,多くの機械システムが微分フラットシステムとしてモデル化することができる.しかし,機械システムには定値外乱が含まれるものが多いにもかかわらず,定値外乱下における微分フラットシステムを対象とした研究はほとんど行われていない.本研究では,定値外乱下における微分フラットシステムを対象に,線形化による制御Lyapunov関数(CLF)設計と最小射影法を用いた安定化制御則の設計を行う.はじめに,線形化したシステムについてのCLFを設計し,そのCLFを用いて定値外乱を含む静的なCLFを設計する.その後,設計したCLFが適応制御Lyapunov関数(ACLF)として扱える場合を考える.最後に,設計したACLFを用いて,定値外乱下におけるPVTOLシステムについての安定化制御則を設計し,提案法の有効性を検証する.


 

■ 機体の形状を考慮した制御バリア関数の積分設計法

 東京理科大学・八鍬 雅生,中村 文一

近年,制御対象の安全性を保証するために制御バリア関数(CBF)を用いた制御法が注目されている.
制御対象と障害物の衝突回避問題においてCBFを使用した研究は多く行われている.衝突回避問題の多くは障害物や制御対象を円形や球,多角形と想定し,原型を大きくみなすことで任意の制御対象に対応できるが,非球体,細長い形状の場合,保守的な回避行動となる可能性がある.そのため,障害物や制御対象の形状を考慮することは重要である.しかし,制御対象の形状を適切に考慮しなければ微分方程式の解が保証できず,制御対象の形状を考慮した衝突回避の手法には未だに課題が残っている.
そこで本論文では,点群障害物とロボットアームの衝突回避問題に対してCBFを積分することで解の存在性を保証した制御則の設計を目的とする.和の形で表現できるCBFを積分することで非凸集合の安全集合に対しても安全性を保証した制御則が設計可能である.
加えて,研究用人型ロボットアーム「Sciurus17」の3関節をシリアル機構の平面3リンクロボットアームと捉え,コンピュータシミュレーションおよび実機実験により提案法の有効性を明らかにする.


 

行動変容効果を考慮した電力・交通システムの動的最適化と環境負荷評価

早稲田大学・渡邊 泰斗,和佐 泰明,
京都大学・薄 良彦,富山大学・平田 研二,武蔵大学・田中 健太

本論文は動的電力・交通連成システムのレジリエンスを強化する制御メカニズムを考える.スマートシティの脱炭素化のための電動化や緊急時における早期回復を実現するために,電気自動車の実時間管理は本質的な要素である.電気自動車はエネルギー管理機能と運転者の利用状況に依存するモビリティ機能の両立はできない.本論文では物理コストや行動変容を最小化するために,電力・交通連成システムの動的最適化問題を提案する.また,東京中心部を模倣したシミュレーションを通して,提案アルゴリズムの有効性,経済コスト,環境負荷の改善について数値的に評価する.