論文集抄録
〈Vol.59 No.2(2023年2月)〉

タイトル一覧
[論 文]

[ショート・ペーパー]


[論 文]

■ VR環境におけるハンドトラッキングを利用したフリック文字入力インタフェースの改良

千葉工業大学・飯田 春樹, 今井 順一

近年,安価なデバイスの登場によりバーチャルリアリティ(VR)が普及し始めている.特にユーザの手や指の動きをVR環境に反映させるハンドトラッキングの機能を持つHMDの普及が進んでいることから,フリーハンドでVR環境を操作する機会が増加し,それに伴ってVRにおけるフリーハンド文字入力手法が研究されている.その中には実環境のモバイルデバイスで広く利用されているフリック入力に着目した研究もあるが,これらには入力精度が悪いという課題があった.
そこで本論文では,入力精度の改善を目指し,ハンドトラッキング機能を利用したフリック文字入力インタフェースの改良を提案する.先行研究では視覚的フィードバックが必ずしも有効に機能しないユーザの存在が示唆されていることから,視覚に加えて聴覚及び触覚のフィードバックを新たに付与する.また,ハンドトラッキングの破綻が操作の妨げとなっている点に着目し,トラッキングが破綻しにくいキーボードレイアウトを導入する.本論文では2つの評価実験を通じてVR環境内での日本語入力における提案インタフェースの有効性を確認する.


 

■ 相関法と高次ARX同定によるデータ駆動制御のノイズ対策

 近畿大学・小坂  学

FRITとVRFTはデータ駆動制御の代表として,幅広く応用されているが,実際の閉ループ応答を予測できない.最近,実際の閉ループ応答を予測するV-Tigerなどのデータ駆動予測が提案されたが,1回の実験データにノイズが存在しないことを前提としている.システム同定は1回の実験データを動特性の応答とノイズとに分離しようとする.ノイズ除去が目的の場合,同定モデルの次数が大きくても問題ない.本研究では,同定法の中で次数との関連が薄い相関法と高次ARX同定に着目する.相関法はインパルス応答を推定する.安定ならばその波形は,応答が始まってから減衰するまでの区間が主要である.本論文は,(1)波形を初期応答の区間に集中させるために相関法でインパルス応答を推定し,(2) その区間を切り出して高次ARX同定を行い,(3)得たモデルの出力応答をノイズが除去された実験データとしてデータ駆動制御に,とくにV-Tigerに適用することを提案する.


 

■ 自然勾配を用いたポートハミルトン系のための強化学習の高速化

東京都立産業技術高等専門学校・福永 修一, 岩本 有生

強化学習は報酬を最大化する制御則を試行錯誤により獲得する方法である.実システムに対して強化学習を適用することを考えると,1回の学習にかかるコストが高く十分な学習回数を確保することが難しいため,学習回数を削減することが必要となる.ポートハミルトン系の強化学習は方策の探索空間を限定することにより学習の高速化を目指した手法であるが,実用上の観点からさらなる高速化が求められる.本論文では自然勾配を用いることによりポートハミルトン系の強化学習を高速化する.提案手法はActor-Criticアルゴリズムに基づいている.Actorは方策により制御入力を決定し,自然勾配法により2種類の方策パラメータを高速に学習する.CriticはTD誤差を計算し状態価値関数を学習する.強化学習のベンチマークである倒立振子の制御問題に対して提案手法を適用したシミュレーションを行い,提案手法が従来手法よりも学習が高速であることを示す.


 

作業者の働き方を考慮した生産スケジューリングの確率計画モデル

富山県立大学・榊原 一紀, 中 大輔, 中田 康祐,  中村 正樹

本研究では,作業者と加工機械による生産工程を対象に,作業者の作業の処理時間に不確実性が伴い,かつ残業が許される下,メイクスパンと残業コストの最小化を目的とした新規の生産スケジューリングを取り上げる.機械だけでなく作業者における作業もスケジューリング対象とするために,作業者を生産スケジューリングにおける機械として見立てることにより,対象問題をフレキシブル・ジョブショップ・スケジューリング問題として捉える.さらに,本対象問題を二段階確率計画問題に帰着することで,処理時間の不確実性と残業を表現した混合整数計画問題としてモデル化できることを示す.またこのとき,二段階確率計画問題におけるリコースを残業に対応させることでシナリオ毎に残業時間を算出し,残業コストの期待値の最小化を目的関数に組み込むことを可能とする.一方で本研究の対象とする問題の規模は,数理計画法単体での適用が,計算量的に困難となる.そこで現実的な計算時間で近似解を導出するために,擬似焼きなまし法と数理計画法を組み合わせたハイブリッド解法を構築することにより求解時間の短縮を図る.提案モデルおよび提案法の有効性を確認するために,繊維加工における実例に基づく問題を取り上げ,他モデルと比較検証をする.


[ショート・ペーパー]

■ 回転運動の回転半径推定アルゴリズム

一関工業高等専門学校・阿部 林治, 鈴木 明宏

本報では慣性センサを用いて回転半径を推定するアルゴリズムを提案する.回転運動をしている物体から得られた実データに本手法を適用した結果、回転半径を誤差率-15~+18%の範囲内で推定できることを確認した.