Vol.58,No.11
論文集抄録
〈Vol.58 No.11(2022年11月)〉
タイトル一覧
[論 文]
- ■ 非負値行列因子分解を用いた筋シナジー解析における筋電チャンネル数削減手法
- ■ ベイズ最適化による制御器パラメータ調整のためのカーネル関数
- ■ 回転座標変換を用いた車両の円経路追従制御における逆振れ応答の発生条件
- ■ 脆弱な木造住宅用単純構造セミアクティブ制震システムの開発
[ショート・ペーパー]
[論 文]
■ 非負値行列因子分解を用いた筋シナジー解析における筋電チャンネル数削減手法
東京工科大学・上野 祐樹, 土屋 慧, 松尾 芳樹
本研究では、筋シナジー解析において、各筋電チャンネルが筋シナジーの時間パターンに与える影響度による筋電チャンネル数削減手法を実現した.筋シナジーは、表面筋電位の生波形に対してより少ない情報量で身体動作を表わせる特徴があり、身体動作の解析や、身体支援機器などの入力信号として用いられている.より少ない筋電チャンネル数で同様の筋シナジー解析が実現できれば、計測の効率化や、処理の高速化などが期待できる.本研究では、各筋電チャンネルが筋シナジーの時間パターンに与える影響を、計測した筋電データと筋シナジーの時間パターンの内積を求めることで定量評価し、影響の高い筋電チャンネルの情報を削除した筋シナジーの時間パターンを用いて順次影響度を評価することで順位付けを行う手法を提案した.提案手法を物体持ち上げ動作の筋シナジー解析に適用し、評価値により異なる再現度を得られることを確認し、利用目的に応じてチャンネルを選択可能であることを示した.
■ ベイズ最適化による制御器パラメータ調整のためのカーネル関数
北九州市立大学・佐藤 宏樹, 藤本 悠介
本論文では、ブラックボックス最適化の枠組みを用いたデータ駆動型制御器パラメータチューニングについて議論する.
特に本論文は、評価関数をガウス過程回帰により推定するベイズ最適化に着目し、制御器パラメータチューニングに特化した事前共分散関数を提案する.また、数値例と実機実験によりその有効性を検証する.
■ 回転座標変換を用いた車両の円経路追従制御における逆振れ応答の発生条件
北九州市立大学・佐藤 宏樹, 藤本 悠介
本論文では、ブラックボックス最適化の枠組みを用いたデータ駆動型制御器パラメータチューニングについて議論する.
特に本論文は、評価関数をガウス過程回帰により推定するベイズ最適化に着目し、制御器パラメータチューニングに特化した
事前共分散関数を提案する.また、数値例と実機実験によりその有効性を検証する.
■ 脆弱な木造住宅用単純構造セミアクティブ制震システムの開発
福岡工業大学・足立 孝仁, 高原 健爾
本論文の目的は、脆弱な木造住宅に直線動作型デバイスが利用できるセミアクティブな制震システムの設計である.開発したデバイスは、移動子の磁石と固定子のコイルで構成
され、単純な構造である.この装置は、振動の速さに比例して減衰力を発生させ、これはPWM信号で電子的に調整することができ、小さい電力で駆動できる.制御システムはスライディングモード制御理論に基づいて設計した.設計したデバイスの制御の有効性を確認するため、木枠の実験装置に制震デバイスを取り付け、実験を行った.実験結果から、提案したシステムは柱の振動を抑えることができた.
[ショート・ペーパー]
東京都立大学・池川 聖悟, 宮本 楓雅,
群馬大学・端倉 弘太郎,東京都立大学・児島 晃, 名城大学・益田 泰輔
再生可能エネルギーが大量に導入された電力系統においては、系統慣性が減少し、負荷変動に対する周波数変動がより大きくなることが知られている.そして、本来の電力需要と再生可能エネルギーの発電出力の差(ネット需要)もその変動が大きくなるため、これまで以上に高精度な発電予測にもとづく系統の制御が必要になると考えられる.一方近年においては, 気象衛星画像を用いた太陽光発電量の予測法や学習を用いた風力発電量の予測技術が開発され、再生可能エネルギーの短周期予測を系統の制御問題に適用できる可能性が高まりつつある.本稿では、このような予測情報が利用できる系統の負荷周波数制御 (LFC) に着目し、H2予見制御により達成される性能を、H2ノルム、周波数変動のRMS (root mean square) 値の2つの指標に基づいて評価する.そして、これらの性能を予測情報により達成される系統慣性の回復量として特徴づける.
■ 音楽刺激が単路走行中のドライバの反応時間に与える影響に関する一考察
日本大学・高梨 宏之
本論文では、単調な環境の道路を運転しているときに、音楽刺激がドライバの反応時間に与える影響について考察する.追突事故の最も主要な原因は、集中力と注意力の低下であると言われている.これらを維持するために、車の中で音楽を聴いているドライバもいる.本研究では、福島県郡山市で実際に発生した事故を分析し、その周辺環境から追突の要因を探る.先行車の減速や停止が追突の一因である一方、単調な道路環境においては、ドライバーの集中力や覚醒度の低下が要因と考えられる.そこで、音楽が覚醒度や集中力の維持に与える影響を検討する.数名の被験者に、単調な環境を走行した映像を視聴してもらい、5分間隔あるいは10分間隔で反応時間を計測した.反応時間は、走行映像のみ(走行音を含む)を視聴した場合と、被験者が好みの音楽を聞きながら走行映像を視聴した場合で計測を行った.実験結果より、音楽ありの場合には、最初の5分あるいは10分は反応時間が増加傾向となるものの、その後は一定の反応時間となる結果を得た.つまり、音楽等の外部刺激により、単調な環境を走行している際の反応時間を抑制できることがわかった.