Vol.56,No.11
論文集抄録
〈Vol.56 No.11(2020年11月)〉
タイトル一覧
[論 文]
- ■ マッチング理論と繰り返しゲームを用いたEVの最適充電スケジューリング
- ■ 局所半凹制御リヤプノフ関数を用いた有限時間整定制御
- ■ 動画像に対する切り替えを含む仮想カメラワークの実装
- ■ 分散協調制御によるマルチモータシステムの一構成法
[論 文]
■ マッチング理論と繰り返しゲームを用いたEVの最適充電スケジューリング
慶應義塾大学・河野 明莉,中里 拓哉,滑川 徹
本稿では,充電ステーションとEVドライバーを制御しながら,高速道路への流入時にドライバーが最適な充電ステーションを選択し,最適なエネルギー需要量を決定する.本稿の目的は,最適な充電スケジューリングを提案することである.従来研究では ,ドライバーの充電ステーションへの選好に充電価格が考慮されておらず,充電ステーションが決定する充電価格が最適ではなかった.そこで,本稿では,ドライバーが充電ステーションを決定する際の選好に充電価格を考慮する.さらに,充電ステーションの効用関数を新たに設定し,繰り返しゲームにより充電ステーションの利益を最大化する最適価格を決定する.また,繰り返しゲームが収束する条件を理論的に証明し,最後に数値シミュレーションにて従来研究よりも現実的な状況において提案アルゴリズムの有用性を確認する.
東京理科大学・林 拓哉,中村 文一
有限時間整定制御は収束速度を保証する制御法である.しかしながら,非線形システムの有限時間安定性を保証する,局所同次制御リヤプノフ関数(CLF)の設計は難しい問題である.本論文では,元のシステムに対する大域的CLFと原点近傍の同次CLFを個別に設計し,この2つのCLFから局所半凹CLFを構成することで,局所同次CLF設計の難しさを緩和することが可能なCLF設計法を提案する.さらに,提案した局所半凹CLFを用いた制御則設計法を示す.提案法は既にCLFが得られている場合においても,原点近傍にCLFを付加することで収束速度を改善できる利点がある.最後に,提案法の有効性をコンピュータシミュレーションで確認する.
熊本大学・坂本 奨馬,末吉 紘大,岡島 寛
本研究では,定点固定カメラからの映像を再構成し,仮想的なカメラワークを施すことによって視聴者の満足度が高い映像を作成する手法を提案する.この手法では,カメラマンや編集者による撮影および編集が不要となることから,視聴者にとって高い 満足度の動画像を低コストで提供することが可能となる.提案する動画像再構成手法 はReceding Horizon制御の考えを基にしたものである.本論文では注目領域が複数存在するような演奏動画像を対象とする.複数の演奏者からなる演奏動画像に対して満足度の高い動画を再構成するにはトリミング領域のドラスティックな切り替えを実装する必要がある.ここでは各演奏者の動作の大きさによる注目の切り替えやトリミング領域の切り替え頻度などを評価関数に加味することで適切に切り替えを含む動画像を構成する手法を提案した.この動画像の有効性は階層化意思決定法により主観評価実験を行うことで確認した.
豊田中央研究所・天野 也寸志,日比野 良一,
菅井 賢,東北大学・加納 剛史,石黒 章夫
マルチモータシステムは,複数のモータで駆動力分担を行うことにより故障等に対する高信頼化や停止を含めモータ毎に駆動力配分を変えるなどの多様な使い方を実現できる.このような利点を活かすためには各モータが対象特性や環境変化に応じて自動的に駆動力分担を発現できるような分散協調制御系の構築が必要になる.本研究では,4脚動物の脚間協調に着目しその歩容原理を拡張することにより,目標駆動力に追従しかつモータ間協調により停止や始動などの各種の駆動力分担を各モータに指令することなく自動的に実現する制御系を提案する.その効果を3モータシステムを対象にしたシミュレーションにより検証した.