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特集:「ユーザに不便の効用を与えるシステム」

ユーザやステークホルダーに手間をかけさせ頭を使わせるという意味で不便だがそれ故の益を与えるモノやコトがある.一般に,必要は発明の母と言われる時には,不便は解消されるべきものであり,それが新たな技術開発のモーティブフォースにもなる.一方で,人間機械系,ヒューマンインタフェース,人間中心設計など,人と人工システムとのインタラクションが本質である研究領域がある.そこでは,人から人工システムへの働きかけは,不便として忌避されるものではない.人のオペレーションを排除した自動化システムはもはや人間機械系ではないし,そこでのヒューマンインタフェースはもはや「表示装置」でしかない.操縦者はもはや監視者でしかなくなる.この議論は,モノのデザインにとどまらず・サービス・ビジネス・施策などのコトのデザインにおいても成立する.まずもって人が系に含まれることがサービスやビジネスの本質である.2012年8月号「不便の効用を活用するシステム」では,様々な領域で不便の効用を積極的に活用する試みを特集した.以来,メディアなどでも取り上げられ「不便益」を議論するのは研究者に限られるものではなくなった.本特集では,現時点での各種領域における不便益の議論をまとめる.

計測と制御 Vol.60 No.12 目次

[リレー記事]「FACE the future」《第35回》エージェントベースで挑む1億2000万人対象の社会シミュレーション
市川 学(芝浦工大)

特集 ユーザに不便の効用を与えるシステム

[総論] 効率や機能性と直交する価値軸をもつシステムについて
川上 浩司(京都先端大)
[解説] 不便益を得るシステムの要件
平岡 敏洋(東京大)
[解説] ユーザに不便の効用を与えるシステムの発想支援
川上 浩司(京都先端大)
[解説] 磁気計測による鉄鋼構造物の腐食・き裂の非破壊検査
塚田 啓二 (岡山大)
[解説]サービスデザインにおける不便益
野坂 泰生(博報堂)
[解説] 価値工学(VE)における第3の価値:不便益価値
澤口 学(立命館大)
[解説] 不便益とデザイン学:創造的人間行為への回帰
重本 祐樹
[事例紹介] 妨害による人の活動支援
西本 一志(JAIST)
[事例紹介] 〈弱いロボット〉-ウェルビーイングを志向する関係論的なアプローチ
岡田 美智男(豊橋技科大)
[事例紹介] 観光工学-本来の旅のあり方と旅の支援-
泉 朋子(立命館大)
[事例紹介] 不便益のトラベルコマースへの応用とその大規模社会実装
白川 智弘(長岡技科大)
[事例紹介] ポスト・スマート時代のプロダクトデザインワーク(JIDA不便益学生コンペを例に)
影山 友章(名古屋市立大)
[特別企画]<2020年度学術奨励賞受賞論文紹介記事> 周波数変調レーザを用いた距離と速度の同時計測
大島 伸一(日本製鉄)
[編集後記] 川上 浩司(京都先端大)