計測と制御 Vol.58. No.5
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(掲載から1年は計測自動制御学会 会員の方のみ)
特集 新たな時代を迎えた国際単位系(SI)―基礎物理定数による基本単位の定義改定,さらばキログラム原器―
計測は科学の基本であるばかりでなく,商取引や法規制を介して社会生活にも大きな影響を与えるため,信頼性の高い世界共通の単位系が欠かせない.国際単位系(SI)は現在最も広く用いられている単位系であり,日々の生活から先端科学に至るまで,SIの恩恵を被らないものはない.
SIでは,時間,長さ,質量,電流,物質量,光度,熱力学温度の単位である,秒,メートル,キログラム,アンペア,モル,カンデラ,ケルビンが基本単位として定義され,科学技術の発展と共にそれらの定義は進化し続けている.2019年5月20日には,キログラム,アンペア,モル,ケルビンの定義が,それぞれ,プランク定数,電気素量,アボガドロ定数,ボルツマン定数に基づく新たな定義に移行する予定である.特に,キログラムに関しては,1889年に国際キログラム原器の質量として定義されて以来,約130年ぶりに定義が改定される見込みである.
本特集号では,各単位を基礎物理定数によって定義するために実施された国際的な取り組みおよび定義改定を導いた最新の計測技術について概説する.さらに,新たな定義に基づく単位の定義改定によってもたらされるであろう新たな計測技術について紹介する.定義改定の産業界への影響についても企業の視点から紹介する.また,新たなSIを普及させていくためには,高校・大学の先生方との連携が必須となる.教育現場での新たなSIの普及を目指す活動や大学の視点からの新たなSIへの期待についても紹介する.
[リレー記事] FACE the future )《第5回》制御からバイオへの越境,そして融合
堀 豊(慶應大)
特集 新たな時代を迎えた国際単位系(SI)―基礎物理定数による基本単位の定義改定,さらばキログラム原器―
[総論] 新たな時代を迎えた国際単位系(SI)―基礎物理定数による基本単位の定義―
臼田 孝(産総研)
[解説] 基礎物理定数に基づくキログラムとモルの新たな定義―さらばキログラム原器―
倉本 直樹(産総研)
[解説] プランク定数に基づくキログラムの新しい定義がもたらすもの
藤井 賢一(産総研)
[解説] アンペアの定義の変遷と電気素量に基づく定義がもたらす新たな計測技術
金子 晋久(産総研)
[解説] ケルビンのボルツマン定数に基づく定義がもたらす未来の温度測定
山田 善郎(産総研)
[解説] アンペアの定義改定が産業界に及ぼす影響
山崎 陽生(キーサイト・テクノロジー・インターナショナル)
[解説] 光速度によるメートルの定義改定がもたらした光周波数コムによる長さ計測技術の進展
美濃島 薫(電通大)
[解説] アンペアの新しい定義によって電磁気の教科書はどう変わるか
北野 正雄(京都大)
[解説] 原子の光学遷移による秒の再定義に向けた最新動向
井戸 哲也(情報通信研究機構)
[解説] Society 5.0を支える新たなSIに基づく計量標準とその大学教育
本多 敏(慶應大)
[解説] 初等中等教育の現場におけるSI
渡部 智博,島野 誠大(立教新座中・高等学校)
[リレー解説] 《第2回》機械学習と開発環境:深層学習フレームワークの動向
鈴木 亮太(産総研)
[部門だより] 産業応用部門2018年度大会
川上 幸男(芝浦工大)
[書評] 「温度計測 ―基礎と応用―」(計測自動制御学会 温度計測部会 編)
本多 敏(慶應大)
[書評] 「新SI単位と電磁気学」(佐藤文隆,北野正雄 共著)
本多 敏(慶應大)
[編集後記] 倉本 直樹(産総研)