学術奨励賞受賞者
(学術奨励賞・研究奨励賞)9名
〇 歪みゲージを用いたボルト型力覚センサの開発-クライミング動作計測による実験的検証-
(第23回システムインテグレーション部門講演会)
九州大学 中嶋 峻大 君
〇 モデル予測制御器のオンライン自動生成による多様な運転タスクの実現
(第10回制御部門マルチシンポジウム)
名古屋大学 本田 康平 君
〇 大規模な線形時変システムに対する特異値分解を利用した最適アクチュエータ選択―Lorenz 96 モデルへの適用―
(第66回自動制御連合講演会)
東北大学 佐々木 康雄 君
〇 波動制御のための分布・集中定数結合モデルに基づくパラメータ同定
(第66回自動制御連合講演会)
慶應義塾大学 志方 鴻介 君
〇 階層型多目的強化学習による自律分散型交通信号制御
(第21回コンピューテーショナル・インテリジェンス研究会)
千葉大学 齋木 匠 君
〇 バルーンピンアレイグリッパ機構―多様な物体の把持を可能とする2段階形状なじみメカニズム―
(第23回システムインテグレーション部門講演会)
東北大学 釼持 優人 君
〇 Temperature dependent Soft Robotic Gripper
(第23回システムインテグレーション部門講演会)
大阪大学 Prashant Kumar クマール プラシャント 君
〇 遊星歯車機構を用いた角ダクト用清掃機構の試作とブラシ軌跡の検証
(第23回システムインテグレーション部門講演会)
中央大学 人見 峻広 君
〇 抽出する筋肉の数が筋シナジー解析結果に与える影響:筋骨格シミュレーション結果を用いた調査
(第35回自律分散システム・シンポジウム)
東京大学 上西 康平 君
(学術奨励賞・技術奨励賞)5名
〇 巻き付きを活用したヘビ型ロボットの障害物利用推進手法および実機実験
(第23回システムインテグレーション部門講演会)
京都大学 冨山 峻 君
〇 予測制御と制御バリア関数に基づく港湾環境下での船舶自律誘導制御
(第10回制御部門マルチシンポジウム)
東京工業大学 八田 直樹 君
〇 パラメータ事後分布評価に基づくプロセスモデル逐次更新
(第65回自動制御連合講演会)
アズビル株式会社 山内 敏嗣 君
〇 WRS Future Convenience Store Challenge トイレ清掃タスクにおける競技採点システムの開発
(第23回システムインテグレーション部門講演会)
東京都立大学 刈谷 友洋 君
〇 負圧発生機構を用いた壁面登攀が可能な多連結移動ロボットの開発
(第23回システムインテグレーション部門講演会)
電気通信大学 岩井 隆人 君

受賞者略歴および受賞論文概要

なかしまたかと
中嶋 峻大
1998 年熊本県生.2023年九州大学システム情報科学府情報理工学専攻修士課程修了し,現在に至る.

受賞論文「歪みゲージを用いたボルト型力覚センサの開発―クライミング動作計測による実験的検証―」
スポーツクライミングとは,壁に取り付けられたホールドと呼ばれる突起物を掴んで,人工的に作られた壁を登る競技である.スポーツクライミングの動作計測においては,ホールドにかかる力の情報が重要であり,これまでにホールドにかかる力の計測,解析に関する研究がいくつか行われている.これらの研究では,力覚センサを内蔵した専用のホールドを使用する,もしくはホールドと壁の間に力覚センサを挿入することで力を計測している.しかし,前者ではホールドのバリエーションに制約が生まれ,また後者では,力覚センサの厚みによってホールドと壁との距離が変化するため,クライミング課題の難易度が変化するという問題がある.そこでわれわれはこれまでに,ホールドを固定するボルトを力覚センサ化した,3軸のボルト型力覚センサを提案している.これにより,前述の問題点を解決することができる.

ほんだこうへい
本田 康平 君(正会員)
1995年生.2021年名古屋大学工学研究科機械システム工学博士前期課程修了.同年,同専攻の博士後期課程に進学し,現在に至る.2023年日本学術振興会特別研究員(DC2).ロボットの自律移動知能化に関する研究に従事.IEEE学会員.

受賞論文「モデル予測制御器のオンライン自動生成による多様な運転タスクの実現」
自動運転実現のための大きな困難の一つとして,時々刻々と変化する多種多様な運転タスクに対応する必要性が挙げられる.そのため,運動行動計画システムは連続的,並列的に多様なタスクをいかに少ない設計要素で実行可能であるかが重要である.本論文では,モデル予測制御の最適制御問題を現在の運転状況や行動目標に応じて半自動的に生成し,それらを切り替えながら走行するフレームワークを提案した.提案法では,状態空間,予測モデル,制約条件,コスト関数といった,最適制御問題を構成する要素からなる集合を運転タスクの部分集合に対する表現として予めいくつか用意しておき,それらを統一的な手続きで組み立てる.その結果,従来の5分の1程度の設計要素数で複数の運転シナリオを達成可能であることが示された.結局のところ,多様な行動生成のためには,最適制御問題をいかに柔軟に表現するかが重要であり,今後は自然言語処理などとの融合が期待される.

ささきやすお
佐々木 康雄 君(正会員)
1994年生.2019年名古屋大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻博士前期課程修了.2022年同専攻博士後期課程修了.同年,東北大学大学院工学研究科特任助教.2023年名古屋大学大学院工学研究科特任助教となり,現在に至る.流体場などの大規模システムに対する制御系設計の研究に従事.

受賞論文「大規模な線形時変システムに対する特異値分解を利用した最適アクチュエータ選択―Lorenz 96 モデルへの適用―」
本研究では,大規模な線形時変システムにおける,入力に対する出力の感度の最大化のためのアクチュエータの選択手法を提案した.提案手法では,特異値分解を用いて近似的に計算される感度を最大化するアクチュエータを選択する.近似された感度に対して最適なアクチュエータは真の感度に対しても,ある誤差の範囲で最適値に近い値を与えることを示すことができる.有効性を検証するために適用したLorenz 96 モデルの摂動システムでは,提案手法によって感度を厳密に最大化するアクチュエータが選択された.また,このシステムでは,厳密な最適化手法ではシステムの次元の二乗のオーダで計算時間が増加するのに対して,提案手法では一乗のオーダで計算時間が増加することが観察され,大規模システムへの適用に適していることが確認された.今後,本研究を基礎として,入力制約があるもとでの制御やLQ 最適制御に適したアクチュエータ選択手法の発展が期待される.

しかたこうすけ
志方 鴻介 君(正会員)
1999年兵庫県生.2022年慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科卒,2023年同大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻修士課程修了.同年,同専攻後期博士課程に進学.2024年日本学術振興会特別研究員(DC1).現在に至る.速度と力のハイブリッド制御を根幹とする,振動制御やヒューマンロボットインタラクションの研究に従事.

受賞論文「波動制御のための分布・集中定数結合モデルに基づくパラメータ同定」
ロボットや産業機械の運動を制御する際,機構の柔軟性が振動を誘発することがある.振動を抑制するために,制御対象を簡潔なモデルに対応させて制御系を設計することが一般的である.筆者らが提案してきた波動制御法は,柔軟体を伝搬する波が端点で反射を繰り返すことが振動の原因であると捉え(波動モデル),アクチュエータに加わる反射波を外乱として抑圧することによって制振効果を発揮する.本手法は分布定数系に対するアクチュエータ部分のインピーダンス整合としても理解される.本手法の適用にあたっては,制御ゲインの決定に分布定数系部分の特性インピーダンスを必要とする.本稿では,制御対象の特性インピーダンスを同定するための一手法を提案した.波動モデルの伝達関数は双曲線関数を含む形で表現されるため,代数的に解を求めることは難しい.そこで電気系と機械系のアナロジーに着目し,2 種類の同定実験を通して実験機の特性インピーダンス同定を行った.

さいきたくみ
齋木 匠 君(正会員)
1997年千葉県生.2022年千葉大学融合理工学府地球環境科学専攻博士前期課程修了.同年同専攻の博士後期課程に進学し,現在に至る.強化学習を用いた交通信号制御の効率化に関する研究に従事.

受賞論文「階層型多目的強化学習による自律分散型交通信号制御」
交通信号制御は,広範囲の交通流最適化を考える必要がある一方,制御範囲の大きさに伴う計算負荷も考慮する必要がある.そこで交差点ごとに周辺交通流を最適化するエージェントを想定し協調させる自律分散制御が望ましい.この時各エージェントの目的関数にトレードオフが存在するため,パレート最適解集合の探索と解を一意に定める機構が必要となる.本研究では多目的強化学習と階層の導入によりこれらを解決するモデルを提案し,計算機実験によって効果を検証した.

けんもつゆうと
釼持 優人 君(正会員)
1999年山形県生.2023年東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻博士前期課程修了.同年同専攻博士後期課程に進学し,現在に至る.日本学術振興会特別研究員(DC1).グリッパの機構設計に関する研究に従事.

受賞論文「バルーンピンアレイグリッパ機構―多様な物体の把持を可能とする2 段階形状なじみメカニズム―」
ピンアレイグリッパは多種多様な物体の把持を目的に研究されている機構の一種であり,並列に並べられた多数のピンが受動的にスライドすることで把持対象の形状になじむように変形することができる.しかし,従来手法は形状なじみ動作後にピンを特定の方向に移動させることで把持力を発生するため,把持対象の形状や位置,向きによっては把持が困難になる問題を抱えていた.そこで本研究では,ピンアレイをなす各のピンの先端に径方向への膨張が可能なバルーンを備えたバルーンピンアレイグリッパ機構を提案した.このグリッパは,(i)ピンの軸方向へのスライドと(ii)バルーンの径方向への膨張という2段階の形状なじみ動作によって把持対象を柔らかく包み込むように把持することが可能である.本稿では創案原理に基づいて実機を具現化し,把持実験によってその有効性を確認した.

Mr. Prashant KUMAR
Born in Patna, India in 1996. Completed his undergraduate from SRMIST in Mechanical Engineering in 2018. He completed his graduate degree from Osaka University in Systems Innovations in 2023. Currently, he is pursuing his Ph.D. from Osaka University. His research interests are Soft Robotics, Robotic manipulation, and Deep learning.

受賞論文「Temperature dependent Soft Robotic Gripper」
The grasping abilities of Soft grippers are limited as every gripper produces only a bending motion in one fixed direction based on the anisotropy of the design. This limits the kind of objects the gripper can grasp effectively. In this paper, we focus on developing a soft robotic gripper that can grasp objects of a wide range of shapes, sizes, and stiffness.
Each finger in the gripper has two constraining elements made of Humofit, which is a temperature-sensitive variable stiffness material. By varying the temperature, the constraining strength of humofit elements can be controlled. This control is used to generate and switch between three different motionsbending,twisting and extension. The temperature of humofit elements is controlled by passing hot/cold water over them. The gripper utilizes the multi-motion property of its fingers to create multiple grasp poses. For big objects of size over 100 mm, the gripper uses pure bending and performs an envelope grasp. For smaller objects, it uses extension and creates a pinch grasp. For uneven shapes and delicate objects,it performs a twist motion and coils around the object to grasp it.
The gripper succeeded in grasping a small valve and a pillow twenty times the size of the valve. It also succeeded in the handling of extremely delicate objects such as tofu.

ひとみたけひろ
人見 峻広
1998年千葉県生.2021年中央大学精密機械工学部卒業.2023年中央大学理工学研究科精密工学選考博士前期課程修了.現在は国内の農業機械メーカで製品開発に従事.

受賞論文「遊星歯車機構を用いた角ダクト用清掃機構の試作とブラシ軌跡の検証」
飲食店のダクト火災が問題となっており,定期的なダクト清掃による予防が求められている.本研究では,遊星歯車機構を用いてブラシを自転・公転運動させることで粘性の高い油汚れ(油塵)の清掃と回収を両立する清掃機構を提案した.円形のブラシを用いることで丸型ダクト内の油塵を清掃可能であるが,角型ダクトの角部は清掃できないという課題があった.本論文では,自転・公転運動により正方形軌道を描く幾何学形状をモデル化した.
さらに,清掃機構と角ダクト用ブラシを試作し,実際のブラシ軌跡とモデルを比較することで,ブラシをダクト形状に合わせることで丸型・角型両方のダクトを清掃できる可能性を示した.

かみにしこうへい
上西 康平 君(正会員)
1989年宮崎県生.2014年東京大学工学部精密工学科卒業.2016年東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻修士課程修了.2019年同専攻博士課程修了.同年東京大学大学院工学系研究科人工物工学研究センター特任研究員.ヒトの姿勢制御のモデリング,人の行動の解析に関する研究に従事.博士(工学).

受賞論文「抽出する筋肉の数が筋シナジー解析結果に与える影響:筋骨格シミュレーション結果を用いた調査」

ヒトの動作は,多くの筋の協調により実現される.これらの筋活動は「筋シナジー」と呼ばれる,少数のパターンによって説明できることが知られている.しかし,筋シナジー解析の際に,対象とする筋の種類・数については,明確な指針が存在しない.そこでわれわれは,歩行の筋骨格シミュレーションから得られたデータを用いて,筋骨格モデルのすべての筋を対象とした筋シナジー解析と,選択される筋の数を段階的に減らしていく解析を行い,得られたパターン同士を比較した.その結果,対象とする筋の数が少なくなると,すべての筋を対象とした場合とのパターンの類似度が,大きく低下しうることが明らかになった.これは,筋シナジー解析によるパターンの絞り込みが有効に機能していても,筋の活動全体の特徴を捉えられない場合があることを意味する.筋シナジー解析を行う上で,どの筋を解析に含めるかを慎重に検討することの重要性が示された.

とみやまたかし
冨山 峻
1997年福岡県生.2021年京都大学工学部物理工学科卒業.2023年同大学大学院工学研究科機械理工学専攻修士課程修了.現在は国内の重工メーカで研究開発に従事.

受賞論文「巻き付きを活用したヘビ型ロボットの障害物利用推進手法および実機実験」
ヘビ型ロボットは生物のヘビから着想を得て開発されたものであり,その冗長性により災害現場などの複雑な地形での活用が期待されている.本論文では,複雑な環境へ適応を目的とし,環境中の障害物を押すことで反力を発生させ効率的に移動を行う障害物利用推進の手法として,障害物に巻き付きながら目標地点へ移動する動作を提案した.従来の障害物利用推進の手法では,障害物との接触および反力による位置変化が不規則であるためロボットの位置姿勢の制御が難しく,目標地点への到達が不確実である問題があった.提案手法では,移動中に複数の障害物に巻き付くことでロボットを環境に拘束できるため,事前の計画どおりの障害物の利用が可能となり目標地点への到達を保証できる.さらに,環境に拘束されるため傾斜による滑りに強く,従来手法では対応が困難であった水平面以外の移動にも適用可能である.また,ヘビ型ロボットを用いて実験を行い,提案手法の有効性を示した.

はったなおき
八田 直樹
2020年北海道大学工学部機械知能工学科卒業.2023年東京工業大学工学院システム制御コース修士課程修了.同年,(株)日立製作所入社,現在に至る.在学時には,港湾環境下における船舶の自律運航の研究に従事.

受賞論文「予測制御と制御バリア関数に基づく港湾環境下での船舶自律誘導制御」
港湾環境において船舶は入港・着岸・係留等の状況に応じた規則に従いつつ他船舶との衝突を回避する必要があり,運用の複雑さから依然として自律運航の実現は困難である.上記の課題に対し,本研究では港湾環境での入港時における船舶運用を想定しモデル予測制御(MPC)と制御バリア関数(CBF)を組み合わせた階層型制御系を提案する.この方式によりMPC の予測の効果とCBF による安全性の担保という両者の利点を活かすことができる.下位の制御層ではCBFに基づき衝突回避を行いながら目標経路への追従を行う.上位の誘導層ではMPC に基づき経路生成を行う.その際,状況に応じてMPC を切替える.
特に防波堤通過時には,防波堤を通過するタイミングを判断するためハイブリッドMPCを併用することで,規則に準拠した運航を行う.実際の船舶交通データと東京湾の環境を再現したシミュレーションによって本システムの有効性を実証した.

やまうちさとし
山内 敏嗣
1994年静岡県生.2017年京都大学工学部電気電子工学科卒業.2019年同大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了.同年本田技研工業株式会社に入社し,電装部品の品質保証業務に従事.2021年同社を退職し,アズビル株式会社に入社.ベイズ推定によるプロセスモデルのパラメータ推定の研究に従事.2023年同社を退職し,Sansan株式会社に入社.現在,機械学習を活用したアルゴリズムの研究開発に従事.

受賞論文「パラメータ事後分布評価に基づくプロセスモデル逐次更新」
プロセス制御では,モデル予測制御等の対象プロセスの数理モデルを用いる制御手法が存在する.対象の特性は経年変化等により変化するため,定期的なモデルの更新が求められる.一般に,プロセス産業の現場ではシステム同定用データ収集のために,通常の制御の目的とは別にテスト的に入力信号を与える運転を実施するが,費用と労力を要するため,日常の運転データでの同定が望まれる.そこで,不測の外乱の影響が少なく対象の入出力特性が表れているデータを,膨大な運転データから選定することが課題となる.本論文では,対象プロセスのデータから推定されるモデルパラメータ事後分布の評価によりデータを選定し,そのデータから得られるパラメータでモデルを更新する手法を述べる.ベイズ推定では,推定結果を確定値として得る従来手法と異なり,推定結果を分布として得るため,パラメータ事後分散を評価することで,データを選定できることが期待できる.

かりやともひろ
刈谷 友洋
1999年東京都生.東京都立大学大学院システムデザイン研究科機械システム工学域に進学し,サービスロボット設計のプラットフォーム開発の研究に携わる.2023年同大学院博士前期課程を修了し,同年IT企業でシステム開発に従事.

受賞論文「WRS Future Convenience Store Challenge トイレ清掃タスクにおける競技採点システムの開発」
WRS Future Convenience Store Challenge トイレ清掃タスクの目的は,トイレ清掃自動化技術の開発である.本競技は,放水装置を使って模擬尿の散布,競技採点システムを使って模擬尿除去率の計測と採点をする.従来審判は,紙マニュアルでの作業確認とCUIベースの競技採点システムの操作を同時にしていたため,使い方を熟知していないと競技運営が難しかった.また放水装置は,ディスペンサと高さ調整用の土台に分かれており,設置に時間を要した.そこで本研究では,直感的に操作できる競技採点システムと,設置作業が容易な放水装置を開発した.競技採点システムは,GUIを使い,システムの操作と審判の作業管理を同時に行えるようにした.放水装置は,ディスペンサと土台を一体化し,レーザによる位置合わせ機能を搭載したことで簡単に設置できる.本システムをWRS2020愛知大会で使用し,計測・採点作業と放水装置の設置作業の効率化を実証した.

いわいりゅうと
岩井 隆人
1997年東京都生.2021年サレジオ工業高等専門学校生産システム工学専攻卒業.2023年電気通信大学情報理工学研究科機械知能システム学専攻博士前期課程修了.現在は国内の自動車メーカにて操縦安定性,乗り心地分野の開発に従事.

受賞論文「負圧発生機構を用いた壁面登攀が可能な多連結移動ロボットの開発」
壁面を登攀するロボットは,建物壁面の点検や清掃などさまざまな分野で使用されている.壁面登攀時に用いる吸着の手法として,磁力を用いる手法や負圧を発生させて壁面へと吸着する手法等がある.その中でも負圧を用いた手法は,車輪での移動との親和性が高い上に非磁性体での吸着が可能であるが,壁面間移動や障害物乗り越え動作は困難である.そこで,地上面において障害物乗り越え動作や段差移動が可能である多連結移動ロボットに着目し,負圧発生機構を用いることによって上記の問題を解決できると考えた.本研究では,非磁性体環境において壁面間移動や障害物乗り越え動作を行うことを目的とし,負圧発生機構をもった多連結移動ロボットの開発を行った.負圧発生機構の構成について比較実験をもとに選定し実機の開発を行った.また,静力学関係から天井面および壁面での吸着実現のための条件式を導出し,実ロボットに必要な吸着機構の数を明らかにした.そして各種吸着実験を行いロボットが壁面や天井面において吸着,壁面操舵が可能であることを確認した.