功績賞は,本会が寄与する分野において,科学技術の進歩,産業の発展,もしくは,教育・啓蒙に関し,永年にわたって特別の功労があり,その功績が特に顕著な者の生涯的偉業を讃えるものである.

やまもと ゆたか
山 本 裕 君(名誉会員,フェロー)1950年生

功 績
    それまでサンプル点間応答を無視して設計されてきたサンプル値制御系において,その応答を失わずにモデル化する新しい手法(現在リフティングと呼ばれている)を世界に先駆けて提案し,サンプル値制御系の解析と設計に新たな可能性を切り開いた.この現代的サンプル値制御理論はディジタル制御のスタンダードとなっている.この新しいモデリング手法を展開した論文は1996年のIEEE Control Systems Society (CSS), G. S. Axelby outstanding paper award を受賞している.
2.  上記の現代的サンプル値制御理論を信号処理の分野に拡張し,伝統的なサンプリング定理に基づくShannonの信号復元理論に代わる新しいパラダイムを提唱した.本新手法は,サンプリング定理によるものとは異なり,従来の高域再生限界とされるNyquist周波数を超えた領域までの復元再生を可能とするもので,サンプル値H^∞制御理論を採用することにより,サンプル点間に存在する高周波までをも連続時間の意味で最適化することに成功している.本手法は三洋半導体によってチップ化され,圧縮音源の広帯域復元に大きく貢献し,累計7500万石を超える出荷台数を記録した.また本業績は2009年のシステム制御情報学会産業技術賞,2012年のIEEE CSSのTransition to Practice Award を受賞している.さらに一連の功績に対して,2007年,文部科学大臣表彰科学技術賞研究部門賞,2016年,立石賞功績賞などを受賞している.
3. むだ時間系を含む無限次元系に対して擬有理型というクラスを導入し,無限次元システムの代数的理論の展開を可能とした.この理論体系は,実現理論,モデリングのみならずサンプル値制御系のトラッキング条件などにも応用され,代数的理論の枠組みの応用可能性を広く示した.
4. IEEE Control Systems SocietyのPresident をつとめ,SICE Liaison や本会の国際委員長,その他の活動とも併せて本会の国際化に貢献した.2010年に横浜で開催されたIEEE CSSのMulti-Conference in Systems and Control (MSC)の招聘などはその成果の一環である.また本会とCSS とのMOU締結にも貢献した.

略 歴
1978年 米国州立フロリダ大学(数学専攻)Ph. D. (R. E. Kalmanに師事)
1987年 京都大学院応用システム科学専攻 助教授
1997年 同大学院,同専攻教授
1998年 京都大学大学院情報学研究科教授
2015年 定年退職,京都大学名誉教授
2016年~2018年  Professeur a CentraleSupelec,  Orsay, France
学会等での活動
1996年~1997年 計測自動制御学会評議員
2002年 計測自動制御学会制御部門長
2003年~2005年 計測自動制御学会理事
2005年~2008年 IEEE CSS (Control Systems Society) Vice President
2008年 システム制御情報学会 会長
2013年 IEEE CSS, President
栄誉職
1998年 IEEE フェロー
2005年 計測自動制御学会 フェロー
2013年 国際自動制御連盟(IFAC)フェロー
2015年 システム制御情報学会 名誉会員
2017年 IEEE Life Fellow
2019年 計測自動制御学会 名誉会員