2016年度計測自動制御学会学会賞 学術奨励賞の贈呈
2016年度計測自動制御学会学会賞 学術奨励賞の贈呈
(2017年2月20日,第7回定時社員総会会場において贈呈)
(学術奨励賞・研究奨励賞)10名
○交流磁場を用いた燃料電池の欠陥部推定
(第33回センシングフォーラムで発表)
東京大学 小池正憲君
○PODと深層学習による非線形モデル低次元化
(第3回制御部門マルチシンポジウムで発表)
京都大学 長澤雄二君
○有向グラフのカクタス可拡大条件
(第3回制御部門マルチシンポジウムで発表)
京都大学 久禮俊晃君
○「手応え制御」に基づくヘビ型ロボットの開発
(第28回自律分散システム・シンポジウムで発表)
東北大学 中島大樹君
○環境からの力覚情報を活用した多足類型ロボットの脚間協調制御
(第28回自律分散システム・シンポジウムで発表)
東北大学 酒井和彦君
○都市交通システムに対するマルチエージェント型最適化モデルと
公共バス・ルート網設計への応用
(第28回自律分散システム・シンポジウムで発表)
富山県立大学 坂井篤司君
○力覚情報による環境モデリングと試行動作計画に基づいた未知環境手探り行動の実現法
(第16回システムインテグレーション部門講演会で発表)
東京大学 室岡雅樹君
○バンパ組付作業支援ロボットB-PaDY
第3報:複数の確率論的手法の組み合わせによる作業進度の推定
(第16回システムインテグレーション部門講演会で発表)
東北大学 金澤 亮君
○2モータ干渉駆動式変速機構
(第16回システムインテグレーション部門講演会で発表)
東京工業大学 工藤 仁君
○対数線形化末梢血管粘弾性モデルに基づく疼痛評価法の開発:
皮膚電気刺激に対する痛み感覚の刺激周波数依存性に関する検討
(第16回システムインテグレーション部門講演会で発表)
広島大学 松原裕樹君
(学術奨励賞・技術奨励賞)5名
○小型化された共晶点セルの実現とその評価
(第33回センシングフォーラムで発表)
東京都立産業技術研究センター 佐々木正史君
○高速視触覚センサネットワークシステムの開発
(第33回センシングフォーラムで発表)
東京大学 山川雄司君
○高速高精度軌道トラッキングロボットシステム
(第16回システムインテグレーション部門講演会で発表)
東京大学 黄 守仁君
○An Analysis of Collaboration Outcomes: Multi-disciplinary team in Design workshop
(第43回知能システムシンポジウムで発表)
室蘭工業大学 PATITAD Patchanee君
○バイアス項を伴うKaldor-Kalecki景気循環モデルにおけるコヒーレンス共鳴の評価
(第43回知能システムシンポジウムで発表)
福井工業大学 信川 創君
受賞者略歴および受賞論文概要
こいけ まさのり
小 池 正 憲 君(学生会員)
1992年東京都生.2015年東京大学計数工学科卒業.同年東京大学大学院システム情報学専攻修士課程に進学し現在に至る.磁場を用いた燃料電池の非破壊検査の研究に従事.
受賞論文「交流磁場を用いた燃料電池の欠陥部推定」
燃料電池は二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーとして期待されており,特に固体高分子形燃料電池はモバイル機器や自動車などの場面での実用化が進められている.一方,燃料電池は欠陥が生じてしまった場合に水素が漏れだす,電流の偏りによって発熱などが起きるなどの欠点が挙げられている.本研究では,燃料電池の化学反応が起こる部分であるMEAにおける欠陥部を磁場センサを用いることで推定した.MEAをメッシュ分割してそれぞれの部分の電流を推定するイメージングアプローチに加え,欠陥部をダイポールとしてモデル化し,磁場のローラン係数から留数定理を用いて直接欠陥部を推定する手法を提案した.また,その手法を交流電流を利用した場合に適用し,交流電流を用いた場合において提案手法によって欠陥部の位置が推定できることを示した.
ながさわ ゆうじ
長 澤 雄 二 君(学生会員)
1993年兵庫県生.2016年京都大学工学部情報学科卒業.同年京都大学大学院情報学研究科数理工学専攻修士課程に進学し現在に至る.機械学習とモデル低次元化の融合研究に従事.
受賞論文「PODと深層学習による非線形モデル低次元化」
非線形モデル低次元化手法の多くは,非線形系に対して適用可能であるのみで,線形射影による低次元化を対象としている.また,低次元化のための非線形射影を理論的に与える手法は存在するが,実際には求解の困難な偏微分方程式の解が必要であり,とても実用的であるとは言い難い.本研究では,正規直交分解(POD)を利用した既存手法に,ニューラルネットワークを用いた機械学習の考えを取り入れ,上記の問題を解決する.提案手法はシミュレーションベースの手法であるので,容易な実行手順により,非線形系に対する適切な非線形の低次元化射影が得られる.さらに,対象が入力アフィンな制御系であれば,最適性に関して可制御性を考慮した理論的解釈が可能である.これは,理論的な解析が主に自律系のみに留まっていたPODを用いた手法の課題をも解決することができる.
くれ としみつ
久 禮 俊 晃 君(学生会員)
1993年大阪府生.2015年京都大学工学部物理工学科卒業.17年京都大学情報学研究科システム科学専攻修士課程修了.ブーリアンネットワークと呼ばれるネットワークシステムの安定性の解析に関する研究に従事.
受賞論文「有向グラフのカクタス可拡大条件」
カクタスグラフと呼ばれるグラフをネットワーク構造として有するネットワーク化システムには,さまざまな有用な性質があることが知られている.その一方で,カクタスグラフでなくてもカクタスグラフと同様の性質をもつ場合がある.そのような場合の多くは,ある種の等価変換によってカクタスグラフに帰着できることが知られている.したがって,このようなグラフのクラスを明らかにすれば,カクタスグラフが有する特別な性質をほかのグラフに展開することが可能となる.しかしながら,カクタスグラフに変換できるグラフのクラスはこれまでに知られていない.
そこで本研究では,カクタス可拡大条件と呼ぶ,等価変換によってカクタスグラフに帰着できるグラフの条件を導出した.本成果によって,かなり広いクラスのグラフがカクタスグラフに帰着されることが明らかとなり,カクタスグラフに対して導出された既存の成果を適用できる範囲を広げることが可能となった.
なかしま だいき
中 島 大 樹 君(正会員)
2014年東北大学工学部情報知能システム総合学科卒業.16年同大学大学院工学研究科博士課程前期2年の課程修了.自律分散制御に基づく生物模倣ロボットの研究に従事.
受賞論文「「手応え制御」に基づくヘビ型ロボットの開発」
ヘビは一次元ひも状というきわめて単純な身体構造でありながら,高度に環境適応的な振る舞いを示す.たとえば,地面に凹凸のある環境下では凸部を「足場」として活用し,足場に身体を押し付けて得られる反力を推進の手助けとしている.このような「足場を活用したロコモーション」の発現機序を解明することができれば,非構造的な環境下においても適切に振る舞いを生成するロボットの創成につながると期待される.これまでに筆者らは上記振る舞いの発現機序の解明に取り組み、「手応え制御則」という新規な制御則を提案した.これは,身体を動作させた際に環境から受ける反力(以下「手応え」と呼ぶ)が推進に寄与するものであるか否かをリアルタイムに峻別し,推進に利する手応えのみを選択的に活用する制御則である.本研究では,ヘビ型ロボットHAUBOT VIを開発し,実世界環境下における提案制御側の妥当性の検証実験を行ったので,その結果を報告する.
さかい かずひこ
酒 井 和 彦 君(正会員)
1990年埼玉県生.2014年東京農工大学工学部機械システム工学科卒業.16年東北大学大学院工学研究科博士前期課程修了.同年富士ゼロックス(株)入社.現在に至る.
受賞論文「環境からの力覚情報を活用した多足類型ロボットの脚間協調制御」
現在この地球上には,ヒトや4脚動物,昆虫,多足類など,さまざまな脚数をもつ生物が存在している.これらの脚式動物は各脚を巧みに強調させること(脚間協調)により耐故障性や環境適応性など驚くべき能力を実現している.ここで上記において,この脚間協調メカニズムは異なる脚数を有する生物間で同一か否か.また,異なるのであれば,何らかの関係性は存在するのかという疑問が生じた.なぜなら,この問題を解き明かすことができれば,生物学的にも工学的にも資することが多いと期待されるからである.そこで本研究では,少数脚に比べあまり研究が行われていない多脚ロコモーションに焦点を当て,モデル生物であるヤスデの脚間協調メカニズムの解明を目指した.まず,実際のヤスデを用いて行動観察実験を行い,その結果をもとに自律分散制御則を構築し,提案制御則の妥当性を製作した多足類型ロボットにより検証した.その結果,ヤスデが示す振る舞いをおおむね再現することができた.
さかい あつし
坂 井 篤 司 君(学生会員)
1993年富山県生.2015年富山県立大学工学部情報システム工学科卒業.同年富山県立大学大学院情報システム工学専攻に進学し現在に至る.マルチエージェント・モデルを用いた都市交通シミュレーションに関する研究に従事.
受賞論文「都市交通システムに対するマルチエージェント型最適化モデルと公共バス・ルート網設計への応用」
近年,人の移動により消費されるエネルギーは大幅な増大傾向にあり,多くの地域で公共交通を軸とした街づくりが行われている.一方で,その取組みの導入効果を実証に基づき評価するには,一般に大きなコストを伴うため,複数の施策を比較検討することは難しい.
そこで本研究では,マルチエージェント・モデルにおいて,エージェントの意思決定に最適化アルゴリズムを組み込んだシミュレーション技法を開発した.このモデルでは,エージェントは出発地から目的地までの移動経路および移動手段の組合せであるトリップの候補からコストや疲労度が考慮された評価関数を計算し,評価値が最小となるトリップを導出する.自治体が運営するバス路線を対象として,バス路線網の現状案および改定案についてのシミュレーションを行い,バス路線網を定量的に評価した.また感度解析により,自治体が行う交通施策が地域住民の交通行動に与える影響を評価した.
むろおか まさき
室 岡 雅 樹 君(学生会員)
2013年東京大学工学部機械情報工学科卒業.15年東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻修士課程修了.同年同専攻博士課程に進学し現在に至る.15年から日本学術振興会特別研究員.2014年 IEEE International Conference on Robotics and Automation Best Conference Paper Award 受賞.等身大ヒューマノイドにおける物体操作行動計画・制御法の研究に従事.
受賞論文「力覚情報による環境モデリングと試行動作計画に基づいた未知環境手探り行動の実現法」
オクルージョン等による不可視領域を含む環境でのマニピュレーションにおいては,ビジョン情報に加えて力覚情報に基づいて動作を計画・実行する手探り動作が有効である.本研究では,未知環境モデリング法,試行動作計画法を統合することでロボットが未知環境でマニピュレーションを実行するためのシステム構成法を明らかにした.まず,力覚センサのセンサモデルを導入することで,時系列力覚情報から確率的に環境マップを更新し未知環境をモデリングする手法を示した.また,マニピュレータと未知環境との関係から,未知環境への試行的な動作における実現性,安全性の概念を定義し,これに基づいて安全な試行動作を計画することを可能とした.以上を統合し等身大ヒューマノイドに適用することで,未知領域への安全なリーチング動作が実現されることを示した.本研究の成果は災害現場等の複雑未知な状況において,ロボットがマニピュレーションタスクを実行する際に有用であると考える.
かなざわ あきら
金 澤 亮 君(学生会員)
2015年3月東北大学工学部機械知能・航空工学科卒業.同年4月同大学博士前期2年の課程入学,現在に至る.作業支援パートナロボットに関する研究に従事.
受賞論文「バンパ組付作業支援ロボットB-PaDY 第3報:複数の確率論的手法の組み合わせによる作業進度の推定」
産業用ロボットによる工場の自動化が進んでいるが,ロボットによる完全な自動化はいまだ難しいというのが現状である.その理由として,近年主流となっている変種変量生産方式への適用の難しさや,現在のロボット技術では実現が難しい複雑な作業の存在,1台のロボットで複数の作業へ対応するような汎用性の高いシステム構築の難しさが挙げられる.このような問題を解決するためのアプローチの1つとして,人と協調して作業を行うロボットシステムの研究開発が行われるようになっている.筆者らは,作業者と協調して作業を行う「作業支援パートナロボット」を提案している.ロボットには難しい作業は人が行い,人が行う必要のない作業はロボットが分担することで,作業者の負担を軽減する.さらに,作業者固有の作業モデルに基づいた行動予測を利用して配送タイミングを決定することにより,作業待ち時間を低減して作業効率の向上を図ってきた.本稿では,従来研究として行っていた部品供給タイミング決定システムを拡張する.作業者の運動情報を統計モデル化することにより作業進度を推定し,よりロバストに供給タイミングを決定するシステムを提案する.さらに,実際に部品供給実験を行って,提案システムの有効性を検証する.
くどう ひとし
工 藤 仁 君(正会員)
2014年埼玉大学工学部機械工学科卒業.16年東京工業大学大学院総合理工学研究科メカノマイクロ工学専攻卒業.一般企業に就職し現在に至る.
受賞論文「2モータ干渉駆動式変速機構」
モータの高効率活用のためには変速機を用いることが有効であるが,ロボットの関節に使用可能な小型の変速機は実用化されていない.これは一般的な変速機は駆動用,変速用に別々のモータを用いるため,変速用モータがデッドウェイトとなるためである.そこで本論文では二つのモータの動力を干渉駆動させ,相対回転方向により高速駆動と高トルク駆動を切替可能な小型の二段変速機構を提案した.本機構は二つの差動歯車機構を用いた干渉駆動機構により分流させた動力を異なる減速比で減速させ,三つ目の差動歯車機構により動力を統合して出力する.この時,出力軸に外力が加わった際に高速駆動側がバックドライブしないよう,高速駆動側はウォームギヤを介して三つ目の差動歯車機構に入力される.切替比,減速比は任意に変更可能であり,かつ回転角度に制限がない.試作機にて提案する変速機が理論通りに駆動される事を確認した.
まつばら ひろき
松 原 裕 樹 君(正会員)
1990年広島県生.2014年広島大学工学部第二類卒業.16年広島大学大学院工学研究科博士課程前期システムサイバネティクス専攻修了.同年富士通(株)に入社.現在に至る.受賞論文は広島大学在学時の研究である.
受賞論文「対数線形化末梢血管粘弾性モデルに基づく疼痛評価法の開発:皮膚電気刺激に対する痛み感覚の刺激周波数依存性に関する検討」
ヒトが知覚する疼痛には鋭く速い痛み(1次痛)と鈍く遅い痛み(2次痛)の2種類の感覚が存在することが知られており,疾病や怪我の種類,度合いにより疼痛感覚(鋭い,鈍い)は異なる.そのため,疼痛に伴う感覚(鋭い,鈍い)を客観的かつ定量的に評価できれば疾病の特定や治療方針の決定などの補助を行なえる可能性がある.
本研究では,電気刺激の刺激周波数を変化させることにより異なる疼痛感覚を与える刺激を覚醒下の被験者に印加したときの疼痛感覚(鋭い,鈍い)の評価値(Numeric Rating Scaleを用いて0:感覚がない,10:感覚が最も強い,の11段階で評価)と,先行研究にて提案した疼痛に反応を示す血管剛性βとの間に関係性があるか検討した.実験の結果,ヒトの知覚する疼痛感覚(鋭い,鈍い)と血管剛性βの間にシグモイド関数で描かれる関係性を確認できた.以上より,血管剛性βによりと人の知覚する疼痛感覚(鋭い,鈍い)を客観的かつ定量的に評価できる可能性を確認した.
ささき まさし
佐々木 正 史 君(正会員)
2007年3月玉川大学大学院工学研究科修士課程修了.同年4月東京都立産業技術研究センター入所.産業用温度計の校正および各種温度計測,電気計測器の校正および各種電気計測により中小企業支援に従事.現在に至る.IEC/SC65B/WG5国内委員会委員.2014年度電気学会基礎・材料・共通部門優秀論文発表賞受賞.
受賞論文「小型化された共晶点セルの実現とその評価」
近年,ガラス,半導体,鉄鋼,航空宇宙産業などにおいて,省エネ,品質・信頼性向上,新技術開発を目的として,1100℃以上での高温度測定の高精度化が望まれている.国内では,新しい高温標準として,金属-炭素共晶点が開発され標準供給が開始されているが,新たな設備投資の負担などを要因とし,産業界への普及には至っていない.そこで,既存の定点実現装置をはじめとし,幅広い装置で共晶点温度を実現するために,産業技術総合研究所で開発された小型共晶点るつぼを使用し,従来よりも小型化された共晶点セルを開発した.これを用いて共晶点温度の実現が可能となれば,多くの校正現場での利用が期待されることから,小型化された共晶点セルによる共晶点温度の実現と不確かさ評価を試みた.結果,校正に必要な融解プラトー形状と保持時間が実現され,不確かさについても十分に有用性のある範囲であり,実用標準としての共晶点温度が実現された.
やまかわ ゆうじ
山 川 雄 司 君(正会員)
1982年栃木県生.2003年小山工業高等専門学校機械工学科卒業.06年東京大学工学部機械工学科卒業.08年東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻修士課程修了.11年同専攻博士課程修了.同年同研究科創造情報学専攻特任助教.14年同研究科システム情報学専攻助教,現在に至る.高速センサネットワークシステム,高速ロボット等の研究に従事.博士(情報理工学).
受賞論文「高速視触覚センサネットワークシステムの開発」
近年,IoT,人工知能,ディープラーニング等の膨大なデータ情報を用いた技術に関する研究が盛んに行われている.これらの技術の性能を向上させるには,入力となるデータの量的かつ質的な向上が必要であると考えられる.そこで本研究では,複数のセンサを同時に利用するとともに,それらの高速なセンサネットワークシステムの開発を目指しており,具体的なシステムとしてサンプリング周期1kHzの高速視触覚センサネットワークシステムを構築している.当該論文では,各センサノードの時刻を高精度で同期させたセンサネットワークシステムを実装した上で,各種センサのデータ取得を同期させる手法を提案し,実機実験を通して,提案手法の有効性を確認している.提案したシステムおよび手法により,時間軸上でデータの整合性が高く,またセンサ入力として有益なデータが得られ,さまざまなシステムのセンサ入力を豊かにするものと期待できる.
こう しゅにん
黄 守 仁 君(正会員)
1983年中国湖南省生.2006年華中農業大学機械工学科卒業.同年華中科技大学コンピュータサイエンス学科を第二専攻として学士学位を取得.09年北京航空航天大学大学院ロボット研究所修士課程修了.14年東京大学大学院情報理工学系研究科創造情報学専攻博士課程修了.同年東京大学情報理工学系研究科創造情報学専攻特任研究員となり現在に至る.高速画像処理,Dynamic Compensationによる知能ロボットとそのマニピュレーションに関する研究に従事.博士(情報理工学).
受賞論文「高速高精度軌道トラッキングロボットシステム」
ロボットによる軌道トラッキング技術は溶接や塗布作業などの自動化生産現場において重要な技術である.従来の教示・再生による軌道トラッキング手法は実現しやすいものの,教示誤差や工具の微細変動など外部からの不確定要素に対するロバスト性に欠けている.一方,力センサや視覚センサなどを用いたフィードバック制御による手法はロボットとセンサのモデルに依存し,高速性と高精度を両立するのは困難なようである.本研究では,ロボットシステムおよび作業環境に不確定性が存在する条件下で,産業用ロボットの高速かつ粗いグローバル運動とロボットに搭載した高速高精度のロボットモジュール(高速アクチュエータおよび高速ビジョン)によるローカルな位置補償制御を融合したDynamic Compensation手法で高速かつ高精度の軌道トラッキングロボットシステムを提案した.実際に,提案システムを用いて滑らかな曲線軌道と長方形軌道を対象とした軌道トラッキング実験を行い,その有用性を確認した.
パティタット・パッチャニー
Patitad Patchanee 君(正会員)
1985年タイ生.2009年Chiang Mai University,faculty of Industrial Engineering卒業.12年Chiang Mai University,faculty of Industrial Engineering修士課程修了.16年室蘭工業大学生産情報システム工学課程博士課程修了.領域横断型PBL演習授業設計支援システムの開発に従事.
受賞論文「An Analysis of Collaboration Outcomes: Multi-disciplinary Team in Design Workshop」
In design process, miscellaneous knowledge is required for achieving desirable goal. Collaboration is a crucial method that contributes designers to create prime solutions by sharing their knowledge within a team. However, the mechanism of generating such new knowledge is implicit. In this paper, a mathematical model of collaboration mechanism is proposed to analyze outcomes of collaboration. To show the effective of the proposed model, collaboration between engineering course students and entertainment media course students was represented by using the proposed model as a case study. As the results, We can illustrate what new knowledge can be gained from a collaboration by using the proposed model.
のぶかわ そう
信 川 創 君(正会員)
2013年兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科博士後期課程修了.同年同大学院看護学研究科特任助教,14年福井工業大学環境情報学部経営情報学科講師,16年同大学准教授となり現在に至る.非線形ダイナミクスおよびニューラルシステム・社会システムにおける揺らぎについての研究に従事.博士(応用情報科学).
受賞論文「バイアス項を伴うKaldor-Kalecki景気循環モデルにおけるコヒーレンス共鳴の評価」
経済システムにおいて,景気に関連する経済指標の周期的な変動である景気循環の存在が知られている.このメカニズムの解明は,経済政策を提案・評価する場合の有効なツールとなることから,マクロ経済学における重要な課題と位置づけられ,現在では,動学的一般均衡理論や経済システムを複雑系として捉えたモデリングの適用により分析が続いている.ところで,一般的な非線形システムにおいて,外部からの確率的ノイズの印加がシステムの挙動に質的な変化をもたらすノイズ誘起現象が広く知られている.近年,非線形経済動学モデルを用いて,ノイズ誘起現象の視点から景気循環のメカニズムを解明しようとする取組みが活発に行われている.そのような中で本研究では,数値シミュレーションと分岐解析により,Kaldor-Kalecki景気循環モデルを対象にノイズ誘起現象の検討を行った.その結果,所得水準が外部からの要因によって一定量のバイアスがかかる条件下で,このモデルが閾値特性を持つことを示した.そしてその閾値特性により,ノイズ誘起現象の1つであるコヒーレンス共鳴が生起することを確認した.