2013年度計測自動制御学会学会賞 学術奨励賞の贈呈
(2014年2月21日,第4回定時社員総会会場において贈呈)

(学術奨励賞・研究奨励賞)10名
○ホルタ心電計によるベクトル心電図と多変量経験的モード分解を利用したT波オルタナンス解析
(東北支部第276回研究集会で発表)
福島大学 下山田 直人君
○無線センサネットワークの分散型時刻同期
(第13回制御部門大会で発表)
東京工業大学 門脇有希君
○安定なコントローラによるむだ時間系の混合感度低減化
(第13回制御部門大会で発表)
京都大学 若生将史君
○遺伝子ネットワークの構造的単安定性
(第13回制御部門大会で発表)
京都大学 吉田卓弘君
○最大事後確率推定により過信を防いだ Point Cloud マッチングによる自己位置推定
(第13回システムインテグレーション部門講演会で発表)
筑波大学 原 祥尭君
○設計容易性を指向した非同期FPGAのアーキテクチャ
(東北支部 第282回研究集会で発表)
東北大学 小松与志也君
○実時間超解像ロボット聴覚システムとその複数同時音声認識への応用
(第13回システムインテグレーション部門講演会で発表)
(株)ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン 中村圭佑君
○非把持形態による柔軟物体の最適伸縮マニピュレーション
(第13回システムインテグレーション部門講演会で発表)
大阪大学 稲原知幸君
○ハプティック・インタフェースの新しい評価手法:多次元知覚空間で実刺激と仮想刺激を捉える手法
(第13回システムインテグレーション部門講演会で発表)
名古屋大学 岡本正吾君
○画像解剖学的な乳腺異常推定による乳房X線画像上の構築の乱れ病変検出法
(東北支部 第277回研究集会で発表)
東北大学 半田岳志君
(学術奨励賞・技術奨励賞)5名
○Measurement of Multi-axis Contact Force using Vision-based Fluid-type Hemispherical Tactile Sensor
(SICE Annual Conference 2013で発表)
Nagoya Univ. Yuji ITO君
○人のすれ違い特性分析に基づくロボットの障害物回避技術の開発
(第13回システムインテグレーション部門講演会で発表)
(株)日立製作所 上田泰士
○磁気駆動マイクロハンドを用いたオンチップ細胞操作
(第13回システムインテグレーション部門講演会で発表)
名古屋大学 市川明彦君
○QRコードを用いたシリンジポンプの流量認証システム
(東北支部 第281回研究集会で発表)
八戸工業高等専門学校 小林健太君
○Intelligent Control Method for Two-Mass Rotary Positioning Systems
(SICE Annual Conference 2013で発表)
Malaysia-Japan Int. Inst. of Tech./Tokyo Metropolitan Univ. Fitri YAKUB君

受賞者略歴および受賞論文概要

しもやまだ なおと
下山田 直 人 君(正会員)
2011年都立産業技術高等専門学校創造工学専攻卒業.2013年福島大学共生システム理工学研究科修士前期課程修了.同年ES東芝エンジニアリング㈱に入社し,現在に至る.

受賞論文「ホルタ心電計によるベクトル心電図と多変量経験的モード分解を利用したT波オルタナンス解析」
T波オルタナンス現象(TWA)は,心室細動等による突然死の可能性を示す有効な指標として注目されており,検査では一般に12誘導の心電計を装着した運動負荷試験が行われている.一方,ホルタ心電計は24時間の心電図を測定可能な小型のウェアラブルな心電計であり,一過性の心電図の異常も記録・検出可能なため心臓の精密検査へのスクリーニングとして用いられている.しかし,ホルタ心電計は,12誘導心電図に比べ精度が低くなってしまうという問題がある.本研究では,ホルタ心電図を利用してTWAの検出を行うことを目的としてベクトル心電図を利用したT波の強調,多変量の経験的モード分解によるノイズおよび体動アーチファクト除去を行い,TWAを検出する手法を提案し,感度・特異度,そしてノイズ耐性についての検討を行った.その結果,提案手法は従来法に比べて良好な検出能力を有する可能性が示唆された.

かどわき ゆうき
門 脇 有 希 君(正会員)
島根県生.2011年松江工業高等専門学校電子情報システム工学専攻修了.同年東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻修士課程に進学.13年同課程修了.同年ソニー(株)入社.東京工業大学在学中はマルチエージェント系の制御の研究に従事.

受賞論文「無線センサネットワークの分散型時刻同期」
近年,無線センサネットワーク技術の発展により,有線系で実現されていたシステムの低コスト化や,従来計測が困難であった事象の観測が可能となった.無線センサネットワークでは,センシングデータの時間的整合性を保つために,センサノード間で高精度な時刻同期が必要となる.また,応用の性質上,ノードの消失などに対応できる時刻同期方法が求められる.本論文では,このようなネットワーク構成の変化に対してロバストな,マルチエージェントの合意手法を利用した時刻同期プロトコルを考える.とくに,ネットワーク化制御で用いられる事象駆動型の手法を取り入れることで,通信効率が良い時刻同期プロトコルを提案する.このプロトコルにより,従来法よりも少ない通信回数で時刻同期が達成できることを解析的に示した.また,数値例を通じて有効性を確認した.

わかいき まさし
若 生 将 史 君(学生会員)
兵庫県生.2010年京都大学工学部情報学科卒業.同年京都大学大学院情報学研究科複雑系科学専攻修士課程に進学.12年同学複雑系科学専攻修士課程を修了し博士課程に進学,現在に至る.むだ時間系のロバスト制御に関する研究に従事.

受賞論文「安定なコントローラによるむだ時間系の混合感度低減化」
一般にH無限大制御で得られるコントローラは不安定になりうる.不安定なコントローラはセンサの故障や制御入力の飽和によって,システム全体が不安定化する要因となる.そこで安定なコントローラを用いて混合感度低減化を達成することを考える.また本研究では制御対象として,入出力むだ時間系を含む無限次元システムのクラスを扱う.まず,このクラスの無限次元システムに対して安定なコントローラによる安定化(強安定化)を実現するためにはSarasonによって提唱されたH無限大一般化補間を用いる必要があることを明らかにする.そして強安定・感度低減化の十分条件を求め,それを用いて強安定・混合感度低減化のための2ブロック問題を定式化する.この 2ブロック問題は, skew Toeplitzアプローチによって解くことができる1ブロック問題に変形することが可能である.これにより混合感度低減化を達成する安定なコントローラを行列計算のみで設計することできる.

よしだ たかひろ
吉 田 卓 弘 君(正会員)
岡山県生.2013年京都大学工学部物理工学科機械システム学コース卒業.
同年京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻修士課程に進学し,現在に至る.

受賞論文「遺伝子ネットワークの構造的単安定性」
生体内におけるタンパク質生成は「遺伝子ネットワーク」によって制御されている.これまで,生物学の分野においてさまざまな遺伝子ネットワークの同定が行われてきたが,ほとんどの研究では,遺伝子間の相互作用に関するネットワーク構造を対象としており,個々の遺伝子の入出力関係は扱われてこなかった.したがって,遺伝子ネットワークのダイナミクスを解析するにあたっては,ネットワーク構造の情報だけを用いた概念や手法が必要とされていた.そこで,本論文では,このような状況を考慮し,遺伝子ネットワークのネットワーク構造だけに依存した「構造的単安定性」という安定性の概念を新たに提案した.そして,構造的単安定であるための必要十分条件を導出し,遺伝子ネットワークが閉路をもたないとき,かつそのときに限って,遺伝子ネットワークが構造的単安定になることを明らかにした.

はら よしたか
原 祥 尭 君(学生会員)
2007年筑波大学大学院システム情報工学研究科博士前期課程修了.同年日立製作所入社.日立研究所(旧,機械研究所)にて,物流支援ロボットや搭乗型移動支援ロボットなどの研究開発に従事.2008年筑波大学受託研究員を兼任.11年9月に退職し,10月より筑波大学研究生.12年4月より博士後期課程,および日本学術振興会特別研究員DC1.自律移動技術や物体認識技術に関する研究に従事.日本ロボット学会,IEEEの会員.

受賞論文「最大事後確率推定により過信を防いだ Point Cloud マッチングによる自己位置推定」
本稿では,移動ロボットに搭載した3次元測域センサで測定した Point Cloudデータ(3次元形状)を走行環境の地図とマッチングする自己位置推定を目的とした.従来のマッチング法では,センサの誤差や情報量の不足(測定範囲が狭い,周辺に測定対象物が少ない,など),アルゴリズムの仮定(静的環境を仮定など)の崩れなどが原因で,過信や過適合と呼ばれる問題が発生し,正しい自己位置を推定できない場合があった.そこで本稿では,Bayesianアプローチに基づく最大事後確率推定により,事前確率の拘束を考慮して過信を防いだマッチングを実現した.実験の結果,センサの測定範囲の狭さや動的な物体の影響により従来のICPアルゴリズムでは過信が発生する状況であっても,提案手法である最大事後確率推定を用いたICPでは正しいマッチングが可能であった.

こまつ よしや
小 松 与志也 君(学生会員)
秋田県生.2009年東北大学工学部電気情報・物理工学科卒業.11年同大学大学院情報科学研究科博士課程前期2年の課程修了.同年博士課程後期3年の課程に進学し,現在に至る.

受賞論文「設計容易性を指向した非同期FPGAのアーキテクチャ」
近年,集積回路の微細化に伴う製造コスト増加により,フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA) と呼ばれるプログラマブルなLSIが注目されている.著者らはこれまで非同期式回路に基づく低消費電力なFPGAを提案してきたが,同期式FPGAと比較してアプリケーションの開発や動作検証が困難であるという問題があった.そこで本研究では,ハンドシェークコンポーネント(HC)に基づく非同期式回路設計手法に着目し,設計容易性と低消費電力性を両立させた非同期式FPGAを提案した.HCはデータの処理やデータパス制御機能をモデル化したものであり,非同期式回路はHCのネットワークとして表現される.提案FPGAでは頻繁に使用される単純なHCは一つのロジックブロックで,複雑なHCは複数のロジックブロックを組み合わせることで39種類のHCを実装可能である.シミュレーションにより,提案FPGAはデータパス制御を含むアプリケーションを効率的に実装可能であることを明らかにした.

なかむら けいすけ
中 村 圭 佑 君(正会員)
東京都生.2007年東京工業大学工学部制御システム工学科卒業.同年,University of Strathclyde 電気電子工学専攻留学.10年東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム専攻修士課程修了.13年京都大学情報学研究科知能情報学専攻博士後期課程修了.10年より(株)ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン勤務.博士(情報学).ロボット聴覚,マルチモーダル情報統合,環境理解,機械制御理論の研究に従事.

受賞論文「実時間超解像ロボット聴覚システムとその複数同時音声認識への応用」
ロボットが人と自然なインタラクションをする上でロボット聴覚による音声認識や音環境理解は不可欠である.ロボット聴覚はロボットに搭載されたマイクロホンアレイを用いて複数音源を処理しながら実時間インタラクションすることが求められるため,1)複数音源を定位・分離するための空間分解能,2)実時間性が重要である.本稿では,これらの性能を向上したロボットのための実用的な聴覚システムについて触れる.1)に対して,周波数領域と時間領域の線形補間を統合したハイブリッド伝達関数補間法を提案し,得られた伝達関数を音源定位・分離に適用することでシステムを所望の空間解像度にする.2)に対して,最適階層音源定位を提案し,音源定位の階層的処理を所望の解像度に合わせて動的に最適化することでフレーム毎の音源定位処理の実時間性を拡充する.最後にこれらをロボット聴覚システムに適用し,複数同時音声認識をベンチマークとしてその有効性を示した.

いなはら ともゆき
稲 原 知 幸 君(正会員)
2011年大阪大学工学部応用理工学科卒業.13年大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻博士前期課程修了.同年(株)NTTデータに入社.

受賞論文「非把持形態による柔軟物体の最適伸縮マニピュレーション」
本研究では,非把持形態による柔軟物体の伸縮操作について議論する.プレート上に置かれた柔軟物体を摩擦力と慣性力を利用して伸縮させる手法を取り扱う.従来の非把持マニピュレーションでは対象物を剛体や質点と仮定して議論されてきた.これに対し,本研究では柔軟物体の操りに言及し,形状を制御する手法を提案している.提案手法は,①簡素なプレートによる遠隔的な物体操作が可能なため,高温,多湿,電磁場など精密機器やヒトが作業できない領域での作業を遂行できる,②非把持形態によって応力集中や破壊を回避できるため,生体組織や食品の操りに適用できる,といった強い利点を有している.今回,プレート加速度に対する対象物変形速度の遷移特性を明らかにし,変形速度を最大化するための最適プレート運動を導出した.ここでは,動力学シミュレーションによって数値的な解を獲得しただけでなく,対象物の挙動解析によって変形速度遷移の物理的意味を明らかにした.

おかもと しょうご
岡 本 正 吾 君(正会員)
2010年東北大学大学院情報科学研究科博士課程後期3年の課程修了.博士(情報科学).同年名古屋大学大学院工学研究科機械理工学専攻助教.ハプティクスおよび人間支援システムの研究に主として従事.

受賞論文「ハプティック・インタフェースの新しい評価手法:多次元知覚空間で実刺激と仮想刺激を捉える手法」
感覚刺激(視覚・聴覚・触力覚刺激含む)の人工提示もしくはシミュレーションにとって,それらが知覚的に本物とどの程度類似しているかを評価する手法の開発は,積年の課題である.シミュレートされた刺激が,本物と物理的に似ているということと,それらの知覚的な類似は必ずしも対応しない.本論文では,仮想刺激の品質を知覚関係図を用いて評価する手法を開発した.この手法は,刺激同定課題の結果から仮想刺激および本物刺激の間の知覚的距離を計算し,多次元尺度構成法を用いて,刺激の知覚的類似性を多次元空間上に表現する.本論文は,刺激間の知覚的距離の計算に関する課題の解法を示し,手法をいくつかの例に適用してみせた.開発された手法は,仮想刺激の品質を視覚的に示すことができ,その問題の特定に寄与するものである.

はんだ たけし
半 田 岳 志 君(正会員)
2013年東北大学大学院工学研究科博士前期課程修了.同年日立製作所(株)入社.横浜研究所 情報サービス研究センタ 社会インフラシステム研究部所属.現在に至る.

受賞論文「画像解剖学的な乳腺異常推定による乳房X線画像上の構築の乱れ病変検出法」
乳がんの早期発見には,乳房X線撮像(マンモグラフィ)技術が大きく貢献し,定期的な検診の場で広く用いられている.このため検診受診者数が増大しており,診断医の負担軽減および診断能向上を目的として,計算機支援診断(computer aided detection/diagnosis: CAD)システムの開発が行われている.乳がん画像所見の一つである乳腺構築の乱れ検出用のCADアルゴリズムも多く提案されているが,従来法では病変検出の核となる放射状の乳腺構築という特徴量の抽出性能が悪いことと,仮に正確な抽出ができたとしてもそこから病変陰影を表現する適切なモデルを求めるのが困難であることの2点の問題がある.本研究では,これらの問題を解決するために,Difference of Gaussians を用いて従来より正確な抽出が可能な,病変部と周辺領域との平均的輝度差という新たな特徴に着目し,病変候補領域における画像解剖学的な正常乳腺モデルに基づいて正確な病変検出を可能にする方法を提案した.臨床データを用いた従来法との比較実験により,提案法の優れた検出性能を示した.

いとう ゆうじ
伊 藤 優 司 君(学生会員)
愛知県生.2011年名古屋大学大学院工学研究科博士前期課程修了.同年(株)豊田中央研究所入社.13年名古屋大学大学院工学研究科博士後期課程入学し,現在に至る.触覚センサ,ドライバモデルに関する研究に従事.

受賞論文「Measurement of Multi-axis Contact Force using Vision-based Fluid-type Hemispherical Tactile Sensor」
人のような器用な動作を機械が実現するため,必要な要求仕様(柔軟性,構造簡易性,多機能情報取得)を満たす光学式触覚センサが重要となる.本研究では,筆者らがこれまで提案した光学式触覚センサを拡張し,さまざまな接触状況に対応可能な多軸接触力の計測を目的とする.本センサはCCDカメラ,LEDライト,圧力計測器,および半球殻形状の弾性膜の内部に流体が封入されたタッチパッド,で構成されており,タッチパッドに作用する接触力は,弾性膜の張力及びタッチパッドの内圧の合力で定式化可能となる.タッチパッド内圧は圧力計測器にて計測する.弾性膜の張力は,膜表面を分割して検討する事で得られる微小面粗に対して力の釣合式を導出し,それらの連立方程式の解として算出可能となる.本研究により,本センサの多機能性が向上し,より実用上有効なものへ発展した.今後は,ロボットハンドへの応用等,さまざまな応用に取り組むことが望ましい.

うえだ たいし
上 田 泰 士 君(学生会員)
北海道生.2010年東京工業大学大学院情報理工学研究科情報環境学専攻修士課程修了.同年日立製作所(株)入社,現在に至る.ロボットの環境認識,自律移動技術の研究に従事 .米国電気電子技術者協会(IEEE),日本機械学会所属.

受賞論文「人のすれ違い特性分析に基づくロボットの障害物回避技術の開発」
混雑した居住環境でロボットがスムーズに移動するためには,歩行者とロボットが互いに同じ方向へ相手を避けようとして立ち往生する現象,いわゆる「見合い現象」を防止することが重要である.本研究では,人の回避行動を予測・誘導することで,混雑した空間でも見合い現象を起こさずに走行可能な回避技術を検討した.まず,人の回避行動の決定因子を調べるために,混雑した病院内の通路で人同士のすれ違い方を分析した.その結果,回避行動をとった人と避けられた人が明確に分かる48例のすれ違いのうち,47例で,回避行動をとった人のほうが,避けられた人より歩行が速いことが分かった.前記結果をふまえて,ロボットに,自身と相手の速度差を回避判定基準とした回避手法を実装した.病院と同程度の混雑具合である人密度20人/100m2の通路にて走行実験を行った結果,ロボットは見合い現象を起こさずに走行可能となり,本手法の有効性を確認した.

いちかわ あきひこ
市 川 明 彦 君(正会員)
2006年名古屋大学大学院工学研究科マイクロ・ナノシステム工学専攻修了 博士(工学),同年産業技術総合研究所特別研究員,11年名古屋大学大学院工学研究科 特任助教,13年名城大学理工学部メカトロニクス工学科 准教授,現在に至る.マイクロロボット・システムの研究に従事

受賞論文「磁気駆動マイクロハンドを用いたオンチップ細胞操作」
本研究では,細胞の操作を簡便に行うことを目的としたマイクロロボットの研究を行っています.このマイクロロボットは,磁力を用いることで,従来の微細操作の手法にくらべ,強い力で細胞を操作することが可能です.また,永久磁石と電磁石の配置を水平方向に磁力が働くようにすることで,高精度な細胞の把持を実現しています.現在,人体のいろいろな細胞に分化する幹細胞の研究や不妊治療のための卵子検査など,細胞を操作することへのニーズが非常に高まっています.このマイクロロボットの研究をさらにすすめ,このような細胞の応用への実用化を目指して研究を続けています.

こばやし けんた
小 林 健 太 君(学生会員)
2013年八戸工業高等専門学校電気情報工学科卒業. 準学士(工学). 同年八戸工業高等専門学校機械・電気システム工学専攻に進学し,組み込みシステムを用いた医療機器の補助システムの開発に従事

受賞論文「QRコードを用いたシリンジポンプの流量認証システム」
シリンジポンプとは,「早産子」,「低出生体重児」に毎時数ミリリットルというわずかな量の薬品を投与するための機器である.このシリンジポンプの流量設定値の認証を確実にするため,流量設定値の手入力時のチェック,別の看護師の目視によるチェックのダブルチェックという手法が存在する.しかし,この手法を用いてもシリンジポンプの流量設定値に対するインシデントが散見されている.この問題に対し,本研究ではシリンジポンプの拡張デバイスとして,シリンジポンプの流量設定値をQRコードによって表示する小型デバイスの導入を提案し,開発を行った.シリンジポンプの流量設定値を認証するうえで,すべてを機械任せにするのではなく,システムの中に人間も介在させることで,人間の眼と機械の眼によるダブルチェックにより,インシデントの発生を極限まで抑えることができる.開発したデバイスは実運用が可能であることを確認し,第15回新生児呼吸器・モニタリングフォーラムでデモ機の展示を行い,アンケート調査で高い評価を得た.


Mr. Fitri YAKUB(Student Member)
Fitri Yakub received his DipEng., and BEng. degrees in Mechatronics Engineering and Electronics Engineering from University of Technology Malaysia in 2001 and 2006 respectively. He obtained MSc. in Mechatronics Engineering from International Islamic University Malaysia in 2011. He was with the Malaysia-Japan International Institute of Technology since 2012. He is now with Graduate School of System Design, Tokyo Metropolitan University toward his doctoral study in automatic control for vehicle systems. He is a student member of IEEE. He was recipient of an Asian Human Resource Fund by Tokyo Metropolitan Government from 2012 until 2015. His field of research interest includes intelligent control, automatic and robust control, and motion control, which related to applications of positioning systems, vehicle dynamics system, and vibration and control systems.

受賞論文「Intelligent Control Method for Two-Mass Rotary Positioning Systems」
The nominal characteristic trajectory following (NCTF) control structure consists of a nominal characteristic trajectory (NCT) which is the reference motion of control system and a compensator. The NCT is easily determined from the open-loop experimental of the systems. The compensator function is to force the object motion follow the reference trajectory and stop at its origin. The controller parameter can be designed and determined easily without an exact model of the plant and it parameters specification. This paper introduced a fuzzy logic as a compensator for two-mass rotary point-to-point (PTP) positioning systems. The proposed method is adopted to improve the existing NCTF controller by increasing the positioning performances of the systems. The effectiveness of the controller also is evaluated for robustness to inertia variations and compared with existing NCTF controller. The simulation results showed that fuzzy based NCTF controller has a consistent positioning performance and better robustness than existing NCTF controller.