SICE論文集統合および電子化についてのお知らせ
論文集検討委員会(委員長 原 辰次)
1. 論文集統合について
論文集検討委員会は、「論文集は学会の命であり、顔である。すなわち、研究成果の正しい継承(認定と発行)による科学・技術の促進を図ることは学会の主たる役割の一つである。また、これを実現する論文集は学会にとって必須であり、その発行は最も重視すべき学会活動の一つである。」という認識に立ち、検討を重ねてきた。
この認識に立って「論文集」を考えてみると、論文集に対する以下の3つの使命が浮かび上がる。
- (1)情報の選択と蓄積:
価値の高い情報を選別・蓄積し、効率よく知識を獲得する環境を提供すること - (2)研鑽の場の提供:
ピア・レビューでの専門的議論・相互評価による研鑽の場を提供すること - (3)情報の発信と共有:
採択された成果をより多くの読者に紹介し、すみやかな情報共有を促進すること
しかしながら、現状のSICEの論文集は、その使命を十分果たしているとはいえない。[1]「計測自動制御学会論文集」(以下、和文論文集)への投稿数がこの2、3年大きく減少している、[2]「産業論文」の投稿数も当初想定されていたほど伸びていない、等である。一方、「SICE JCMSI」(以下、英文論文集)は順調に伸びており、また Annual Conference 論文の数と各部門大会の論文のトータルの数を合わせて考えると、SICE論文集を活性化する方策を見つけることは可能である。
これまでも、論文集の改革は数多くなされてきたが、その多くは個別の問題を解決するための対処療法的なものが多く、継続的な効果を生むには到っていなかった。今回の改革も、緊急性を要する課題もあるため若干対処療法的な側面もあるが、可能な限り大局的かつ長期的視野に立って検討を行った。具体的には、上記の3つの使命を認識し、読まれる論文集・投稿したくなる論文集・学会の外にアピールできる論文集・学会の本来の活動である議論ができる論文集、という視点で検討を重ねた。その際、これまで各論文集の発行に当たって培ってきた経験を最大限生かすこと、およびSICEの財政基盤を揺るがすことがないよう配慮すること、の2点にも注意を払った。
その結果、改革の方向性として、以下の3つを決定し、理事会(2010年11月8日)の承認を得た。
- (1) SICEの活動を国内外に正しくアピールするため、現行3論文集(和文論文集、英文論文集、「産業論文」)を2012年1月より2論文集(和文論文集、英文論文集)に集約する。
- (2) 論文集の発行形態を2011年7月よりJ-STAGEを活用した電子ジャーナルに移行する。
- (3) 和文論文集の査読形式を2012年に委員会制からAE制に移行する。
(1)の2論文集への集約については、「産業論文」を現在の形態で継続する声もあったが、集約することにより、以下のメリットがあると判断した。
- SICEの産業界との連携をより強くアピールできる。
- SICEに関連する分野の実応用論文が3つの論文集に分散していると、SICEの和文・英文論文集に掲載されるこの種の論文数が減少し、SICEと産業界との関係が希薄であるといった間違った認識を与えかねない。
- 集約化により、相乗効果や事務簡素化などが期待できる。
また、産業界とSICEとをつなぐ役割を果たしてきた「産業論文」の査読方式や有用性を重視した評価尺度等の利点を引き継ぐことにより、集約化の効果がさらに高まることを期待している。
(2)の電子ジャーナル形態への移行は、今般のネットワーク社会への対応として緊急の課題として検討した。「読まれる」したがって「投稿したくなる」論文集には、電子ジャーナル形態への移行は必須と捉え、財政面・運用面を慎重に調査した結果、J-STAGEの活用を採択した。また、移行をスムーズに行うため、段階的なプロセスを踏むこととした。
(3)の和文論文集査読形式のAE制への移行は、これまでも何度か検討された課題であるが、「研鑽の場の提供」という視点で避けられないと判断し、また今回の改革の効果を高めることを期待し、併せて実行することとした。具体的な方法については、英文論文集の経験を生かし、また「論文の査読・評価のあり方」の検討を踏まえて決定していくことが望ましい。
今回の改革はどちらかというと「学会の顔」の部分である。残された大きな課題は、まさに「学会の命」に該当する「論文の査読・評価のあり方」に関する検討である。これに関しては、論文集検討委員会において引き続き検討を重ねる予定である。
2. 電子化について
2011年7月よりJ-STAGEを活用して論文集の発行形態を電子ジャーナル化し、論文集掲載の論文・ショートペーパー等については電子論文(PDF)がダウンロードできるようにする。