2020年2月 改訂

(倫理綱領) 公益社団法人計測自動制御学会会員(以下会員)は,真理の探究と未踏分野の開拓によって科学技術の革新を生み,社会と人の活動を支え,人類の幸福と社会の発展に貢献出来ることを誇りとする. 会員は,社会に対する役割と責任の大なることを深く認識し,名誉と尊厳を抱いて誠実に行動し,自己の専門的能力,技芸および人格を磨き上げるとともに,人類の安全,健康と福祉の向上,人類と自然環境との共生社会の実現にむけて尽力する.このために正直で偏らないように努め,法令を遵守し良心に従い行動する.公益社団法人計測自動制御学会も,その社会的役割を自覚し,公益性を優先するとともに,東日本大震災後ますます重要となった社会に対する説明責任を果たすという立場で,会員を支援する.これらの目標を達成するため,行動規範をここに定め,専門家としての威信と社会的信頼感を高めるように精励努力する.

(行動規範)

I 会員の責務

1.(基本的責任)会員は,自らが生み出す専門知識や技術の質を担保する責任を有し,さらに自らの専門知識,技術,経験を活かして,人類の健康と福祉,社会の安全と安寧,そして国連の持続的開発目標(SDGs)で提唱されている包括的持続性に貢献する.技術が危険性を誘起する場合には安全確保第一に徹し,情報公開の原則のもと,社会的安心感の醸成に努める.

2.(姿勢)会員は,常に正直,誠実に,判断,行動し,自らの専門知識・能力・技芸の維持向上に努め,科学技術研究によって生み出される知の正確さや正当性を,科学的に示す最善の努力を払いその質を担保する.

3.(社会の中の会員)会員は,科学技術の自律性が社会からの信頼と負託の上に成り立つことを自覚し,科学技術と社会・自然環境の関係を広い視野から理解し,適切に行動する.

4. (研究・開発)会員は社会の抱く,真理の解明や様々な課題の解決への期待に応える責務を有する.研究・開発環境の整備や研究・開発の実施に供される研究資金の使用にあたっては,そうした広く社会的な期待が存在することを常に自覚する.

5. (説明と公開)会員は,自らの学会活動に関与する研究の意義と役割を可能な範囲で公開し,積極的に説明し,その研究が人間,社会,環境に及ぼし得る影響や起こし得る変化を評価し,その結果を中立性・客観性をもって公表すると共に,社会との建設的な対話を築くように努める.

6. (利用の両義性)会員は,自らの研究・開発の成果が,会員自身の意図に反して,破壊的行為に悪用される可能性もあることを認識し,研究・開発の実施,成果の公表にあたっては,社会に許容される適切な手段と方法を選択する.

Ⅱ 公正な研究・開発

7. (研究・開発活動)会員は,自らの研究・開発の立案・計画・申請・実施・報告などの過程において,本規範の趣旨に沿って誠実に行動する.会員は研究成果を論文などで公表することで,各自が果たした役割に応じて功績の認知を得るとともに責任を負わなければならない.研究・調査データの記録保存や厳正な取扱いを徹底し,ねつ造,改ざん,盗用などの不正行為を為さず,また加担しない.

8. (環境の整備と教育啓発)会員は,責任ある研究の実施と不正行為の防止を可能にする公正な環境の確立・維持も自らの重要な責務であることを自覚し,会員コミュニティ及び自らの所属組織の研究・開発環境の質的向上,ならびに不正行為抑止の教育啓発に積極的に取り組む.また,これを達成するために社会の理解と協力が得られるよう努める.

9. (研究対象などへの配慮)会員は,研究への協力者の人格,人権を尊重し,福利に配慮する.動物などに対しては,真摯な態度でこれを扱う.

10. (他者との関係)会員は,他者の知的成果などの業績を正当に評価し,名誉や知的財産権を尊重する.他者の成果を適切に批判すると同時に,自らの研究に対する批判には謙虚に耳を傾け,誠実な態度で意見を交える.また,会員コミュニティ,特に自らの専門領域における会員相互の評価に積極的に参加する.

Ⅲ 社会の中の科学技術

11.(社会との対話) 会員は、社会と会員コミュニティとのより良い相互理解のために,市民との対話と交流に積極的に参加する.また,真理の解明や社会の様々な課題の解決と福祉の実現を図るために,政策立案・決定者に対して政策形成に有効な科学技術的助言の提供に努める.その際,会員の合意に基づく助言を目指し,意見の相違が存在するときはこれを解り易く説明する.

12.(科学技術的助言) 会員は,公共の福祉に資することを踏まえて研究・開発活動を行い,客観的で科学技術的な根拠に基づく公正な助言を行う.その際,会員の発言が世論及び政策形成に対して与える影響の重大さと責任を自覚し,権威を濫用しない.また,科学技術的助言の質の担保に最大限努め,同時に科学技術的知見に係る不確実性及び見解の多様性について明確に説明する.

13.(政策立案・決定者に対する科学技術的助言) 会員は,政策立案・決定者に対して科学技術的助言を行う際には,科学技術的知見が政策形成の過程において十分に尊重されるべきものであるが,政策決定の唯一の判断根拠ではないことを認識する.会員コミュニティの助言とは異なる政策決定が為された場合,必要に応じて政策立案・決定者に社会への説明を要請する.

Ⅲ 法令の遵守など

14.(法令の遵守)会員は,研究の実施,研究費の使用等にあたっては,法令や関係規則を遵守する.

15. (差別の排除)会員は,研究・開発活動において,人種,ジェンダー,地位,思想・信条などによって個人を差別せず,科学技術的方法に基づき公平に対応して,個人の自由と人格を尊重する.

16. (利益相反)会員は,自らの研究,審査,評価,判断,科学技術的助言などにおいて,個人と組織,あるいは異なる組織間の利益の衝突に十分に注意を払い,公共性に配慮しつつ適切に対応する.

倫理綱領・行動規範(PDF)